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□まさとのきまぐれ
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「なあ、神宮寺。」

唐突に真斗が口を開いた。

「ん??何だい。」

雑誌を読み耽りながらレンは生ぬるい返事をした。

「接吻しろ。」


「ああ、そうかい、それじゃあ・・・・・
って、・・・・え??」


ぽかんと口を開けながらレンは固まってしまった。

聞き違いだろうか。何やら接吻とかいう単語が真斗の口から出てきたような・・・・

だがしかし気のせいだろうと思いこんで、神宮寺はまた雑誌に目を戻そうとした。

するとまた頭上の真斗から声がする。

「聞こえなかったか。接吻しろと言っている。」


今度ばかりは気のせいだということもできなかった。何故なら真斗が身を乗り出してレンの顔を覗きこんでいるからである。



「ああ、そうか、接吻ね、はいはい。せっぷ・・・・・接吻!?」


ようやく言葉の意味を理解したレンは、驚きのあまり持っていた雑誌を放り投げた。


「お前・・・キスして、ほしいのかい?」

なにかの間違いだろうと未だに疑いの気持ちで真斗に聞いてみる。


「だからそうだと言ってるだろう。何度も言わせるな恥ずかしい奴め。」


少し顔を赤らめながら無愛想な顔で真斗が答えた。


「またなんでだい。お前から誘ってくれるなんて珍しいね。」


どうしても分からなかったことと、もう少し恥じらう顔が見たくてわざと意地悪な質問を投げかける。
心の中では狂喜乱舞したいほど嬉しいのだが、あえて表情に出さないように努める。


「いいだろう。ただ気が向いただけだ。」


ますますもごもごと恥ずかしげに真斗が言葉を紡ぐので、可愛くてたまらない気持ちに襲われる。


たまにこうやって恋人の真斗はキスやそれ以上のことも求めてくる。
普段は公共の場で触れようものなら言語道断で手をはたき返してくるだけに、とてつもない衝撃が身体を、脳を貫く。


なんでこう可愛いもんかな俺の子羊ちゃんは。

しみじみとそう思いながら、逸る心を落ちつかせる。


「そうかい。おいで。」


微笑みながら両腕を広げれば、おずおずと腕の中に真斗が収まってくる。とてつもなく可愛い。

一体全体こんなことして俺を殺す気なんだろうかと時々本気で考える。


心底悶えつつ、レンは真斗に尋ねる。


「今日はどんなキスがいいかい?」


優しく問うと、それはそれは恥ずかしそうに真斗は口を開いた。


「激しいキスが・・・ほしい。」



ああもうダメだ。


そうレンが思ったときにはもう理性はぷつりと切れた後だった。



真斗が望んだような、激しく優しいキスを仕掛ける。貪るように唇を、口内を、蹂躙する。



いつだって。



君の前じゃ俺の理性なんて



あってないようなものだけど。



ただ今は



この甘い唇に 声に 顔に



酔い痴れていたいだけ。

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