短編

□クロームといっしょ
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*クロームといっしょ

「むーちゃん、あーそーぼー。ねーねーデパート行こうよデパート。デパートって良いよね、なんか響きって言うのかな。デパ地下って良いよね。あ、そうそう。今週さ、ご当地フェアってのがやってるんだって。ケーキとか大福とかあるの」

「………えっ」

「え、良いの?やったー!よし、じゃあバスでデパート行こうか」

「か、佳那ちゃん……」

むーちゃんが快く一緒に行ってくれるって言ったから(ノット無理矢理)バスに乗ってデパートを目指すことにした。降りるときに真っ先にボタンを押したいから私は窓際に座った。そんで隣にはむーちゃんが座ってる。
本当、むーちゃんって優しいよね。むっくとは大違いだよ。似てるのは髪型だけだったよ。むっくには優しさの欠片なんてないよね。あーでもたまにあるかな。ほら、ジュース買ってくれたり。でもやっぱむーちゃんのが優しいよ。

「むーちゃんは大福とケーキだったらどっちが好き?」

「……麦チョコ」

「なるほど!麦チョコ美味しいよね。たまにスーパーとかで苺味見つけるよ。うーんそうか、駄菓子かー。私はあれかな、スルメイカが好きかな。あっそうだ、ご当地フェアのチラシあるんだ。むーちゃん見る?ちょっと待ってね」

がさごそがさごそ。確かここらへんにあったのにな。あ、あった。ちょっとぐしゃぐしゃだけどまあいいか。むーちゃんだもん。許してくれるって。それぐらい多目に見てくれるよね。
私はむーちゃんにぐしゃぐしゃになったご当地フェアのチラシを渡した。

「……しわくちゃだね」

「そ、そんなことないよ!」

厳しい!やっぱりむーちゃんは几帳面なのかな。私は配られたプリントとか適当に折ってるし。ファイルの中に入ったら良いかなーみたいに考えてるけどむーちゃんは綺麗に半分に一ミリもはみ出さずに折ってるのかな。くそー。じゃあむーちゃんのファイルの中は綺麗に整頓されてるのか。私とは大違いだよ。
そんな事を悔しがっているときだった。

『――……次は、並盛デパート前……』

「私が押すんだぁぁぁー!」

ピンポーン。よっしゃぁぁー押せた!嬉しさのあまりガッツポーズをしてしまった。恥ずかしい恥ずかしい。あ、勿論むーちゃんに当たらないようにやったから大丈夫だよ。

「佳那ちゃん、なんだか嬉しそう」

「うん!だってボタン押せたもん。あ、後ファミレスとかのボタンを押すのも好きだよ」

「そっか、私あまりファミレスとか行かないから」

「じゃあ今度遊んだ時に行こうよ」

「え?」

「あ、でもボタン押すのは私だからね!あー……、けどむーちゃんが押したかったら一緒に同時に押そうね」

「……うん!」

今度遊ぶこと、ファミレスのボタンは一緒に押すって約束をした。ファミレスでなに食べようかなーって考えながらちゃんと指切りげんまんもした。






(むーちゃんむーちゃん!ういろうがあるよ)

(佳那ちゃん良かったね)






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