短編
□二泊三日のハイエルボー
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きみにあげる
に企画参加した作品です。
それは冬の寒い日やった。奴が来たのは。
「とりあえず二泊三日、三食食事付きで頼む。支払いは後日改めて」
「なしてや」
「いや、まぁあれだ。どうやら散歩をしてる途中に財布を落としてしまったようでな。交番に行こうにも、警察に追われている身……」
「家に帰ったらえいやん」
「……エリザベスと喧嘩をして帰るにも帰れない身……」
ふざけちゅうにしても度がすぎる。うちは、顔を青うしちゅう桂に向かって一言言った。
「帰れ」
「そんなこと言わないでくれー!た、頼れるのはお前しかいないんだ!勿論銀時の所にも行ったさ。だが奴はこう言ったんだ『ベランダなら開いてるぞ』と!酷くないか!?俺は銀時とは良い友人だと思っていたのに……」
「いや、それが正解やき。うちもおまんが来たら絶対そう言うき」
「そんな!とにかくだ、二泊三日だけで良いから泊まらせてくださいもう本当にお願いします」
という訳で、外では雨が降りゆう中、その日からうちの家には桂が二泊三日だけ泊まることになった。本当に不本意やけど。
それからと言うものの、桂はよっぽど寒空の下に追い出されたく無いがやろう。掃除や食器洗いなどといった家事を積極的に行っている(奴がななんと言おうと洗濯は絶対にやらせない)。別にうち追い出さんのに。流石にそこまで鬼やないきね。
あ、そういや今日醤油が安かったっけ。後白菜とかも。ポン酢も切れてたし。
「桂、うちちょっと買い物行ってくるき」
「そうか。ならついて行こう」
桂の声を軽く聞き流し、雨降ってないかなーと思いつつ、玄関を開ける。すると、地面には濡れた跡があった。
「雨降っちゅうけんど傘いるろうかね」
「ふむ、一応持って行った方が良いと思うぞ」
「んじゃあ折り畳み傘持って行くわ。あ、ちょっと待ちよって。かまえてくるき。そうそう、桂の傘は知らんき」
ガーンッと、効果音がつきそうな表情をする桂。ははっ、うける。そんな桂をよそに、財布やら携帯を鞄に入れる。一応タオルも入れちょこうかな。
準備が出来たき外に出ると、そこには笠を被っちゅう桂が居った。まさか傘が無いきそれで賄うがやろうか。何が何でも無理があるやろ。いや、でも桂のことだ。もしかしたらアレは変装をしているつもりなのかもしれない。
あーでもこうしているうちにまた雨が降るかもしれんきしゃんしゃん行こう。うん。
「今日は鍋にしようかな」
家に帰って来て早速、買ってきた物を冷蔵庫に入れる。冬やき寒いし、何より桂の分のご飯を作るのが面倒やき鍋にしようかな。鍋ならまぁ楽だしえいかな。要するに煮たらえいだけやしね。決して料理が下手だとか苦手とかではない。作るのが面倒なだけや。
「桂、そっちの机かいて」
「………え、かく?」
「やき、そっちの机かいてって言ゆちや」
「あ、そのー……」
「……………」
お鍋が出来る数分前、桂があまりにもモタモタしていたのに苛つき、ハイエルボーを食らわした。エルボーやなくて腕を九十度に曲げて行うハイエルボーにしたのはなんとなくやった。多分、気分的な問題やったと思う。
(早よう机持ってって言いゆうがやきしゃんしゃんしいや!)
(持つって意味なのか……グフォッ)
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