短編

□ヒバードといっしょ
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*ヒバードといっしょ

どうしようかな。私は今困ってる。だってさ、目の前に可愛い鳥がいるんだよ。しかも喋ってるし。名前何て言うのかな。勝手に付けて良いのかな。よし、私が名付け親になってあげようっと。うーんと、うーんと。

「ゴンザレス」

「イヤダ」

「えーじゃあピエール」

「イヤダ」

「ビクトリアは?」

「イヤダ」

「むー……我が儘だな。じゃあいいよ、勝手にピョートルって呼ぶから」

端から見たらおかしな光景だなーって思う。まぁ私この後用事があるからバイバイだけど。

「じゃあね、ピョートル。またねー」

「バイバイ」

窓の所に止まっていたピョートルに後ろからバイバイって言われた。何これ可愛い。だけど私はやらなければならないことがあるのだよ。サラダバーピョートル。
さてさて、向かった先はただの音楽室。習い事のピアノを全く練習していないからヤバいんだよね。小さい頃はピアノを弾く事が楽しかったけど今はもう止めたいって思ってる。だって時間ないし。おかげで新しい曲になかなか進まない。
習いはじめたきっかけはお母さんが可愛らしい女の子に育ってほしかったからだったし。まぁ、残念な結果になりましたよ。ははっ。今ではゲーム大好きな柔道部だよ。ごめんね、お母さん。まぁ仕方ないよ。結果は結果。人の性格とか諸々って環境と遺伝子で決まるんだもん。うん、仕方ないよ。どんまい、お母さん。

「確か次やるのって23番の帰郷だっけ。これ♭(フラット)三つ付いてるから嫌だなー」

三つだからシミラが♭で半音下げなければならない。シだけ♭だとかファだけ♯(シャープ)なら直ぐに解るけど流石に♭が三つになると解らなくなってしまう。あ、なんかもう嫌になってきた。
そういやピョートルはどこに行ったのかな。もしかしたら飼い主のとこへ帰ったのかもしれない。もしくは食べられ……ないか。

「疲れたぁぁぁー」

「ウルサイ」

「ピョートル、どこ行ってたんだ。探したんだぞ」

「ウソツキ、ウソツキ」

「イヤダナーウソナンカツイテナイヨー」

ピョートルのように片言で喋ったらピョートルにつつかれた。ちょ、地味に痛い。酷いなー誰に似たんだろう。飼い主かな。知らないけど。

「ピョートル。私、こんなときどんな顔をすればいいのか解らないの」

「ワラエバイイトオモウヨ」

「本当に?ありがとう」

よし、じゃあピアノの練習止めて家帰ってゲームしよう。この間新しいの買ったんだよね。実に楽しみだ。私は後片付けをすると、音楽室から出て行った。ピョートルにバイバイしたらピョートルもバイバイしてくれた。嬉しいなー。






(お帰り、ヒバード)

(ワラエバイイトオモウヨ)

(どこで覚えてきたんだ)






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