わんこな日々

□これは
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私は今、久々の休暇を堪能していたりしていなかったりしています。何故かって。プライベートでも犬(わんこ)が居るからです。私の横には相棒のライルとその娘のライチ。所謂気分はパパと一緒に娘の買い物にお出かけ中だ。
なんで付いてくんのかなぁ。私は盛大に溜め息をついた。すると、私の気持ちを知ってか知らずか(おそらく後者だろう)ライチは私の足元にすり寄ってきた。こっちは買い物で来たって言うのに。こうなったらただの散歩ではないか。
私は、ライチを抱きかかえると下町へと向かった。
因みに今の私は仕事中とは違ってラフな服装。まあ、仕事中でもラフなんだけどね。動きやすさ重視で。

八百屋に来ると、真っ赤に熟れた美味しそうな林檎があったので買うことにした。いくついるかな。出来れば犬(わんこ)達にも食べさせてやりたい。でも、ライチや荷物を持って歩き回るのは少し無理があるだろう。私は持てる分を考えた結果、林檎を6つ買うことにした。

「すみません、林檎を6つ下さい」

「はい、まいどあり」

紙袋に入れてもらった林檎を片手に持つと、開いている片手からお金を渡した。ありがとうございますと言えば、おばちゃんは笑顔でありがとうね、と言ってくれた。それを見て、私にはこんな笑顔をつくるなんて到底無理だろうなと思った。あーあ。

「わんっ」

「ライチ……そんな目で私を見てさ、何。抱っこしてほしいの。そういうのはね、普通パパに言うんだよ」

「わふぅー」

なるべくライチと同じ目線になって話すと、ライチはきょとんとしていた。ちょっとお父さん、教えてやりなよ。隣に座っているライルを見ると呑気に欠伸をしていた。駄目だ、完全にプライベートモードに入っている。
キオは、ため息をつくと折っていた膝を伸ばし立ち上がった。

「さてと、ご飯でも食べに行こうかな。お前達はおあずけだけど」

「………わふ」

えー、って顔をするライルに対して訳が解っていないライチ。流石にご飯抜きはキツいかな。でも店内とか絶対犬禁止だしな。どうしようか。あ、そうだ。サンドイッチなどのパンにして食べるかな。それなら外で食べられるし。よし、そうと決まれば買いに行こう。

「行くよ」

「わんっ」

私の声に、ライチは元気に返事をしてくれた。可愛いなあ。それと反面、相棒のライルはどこか遠くの方を見ていた。何を見ていたかは知らないけど私はあまり気にしなかった。

「ホットサンドと、卵、ハム、トマトのサンドイッチを一つずつ下さい。後パンの耳を五袋でお願いします」

「はいよー」

飲食店だから流石に犬が近くに居るのはちょっとアレかなと思い、二匹は数メートル離れた場所に座らせている。温和しく座っているお父さんのライルとは違い、娘のライチはこっちに来たそうにしている。でも、ライルに駄目だと言わんばかりに押さえ込まれてて動けないようだ。
店員さんにお金を渡すと、出来立てのサンドイッチとパンの耳が入った袋を貰った。その重さに少しばかり買いすぎたかなと思ったけど、食べれなかったら別に後で食べたら良いだろうと思い片付けた。
さて、お昼ご飯も手に入れた事だしどこかに座って食べよう。私は二匹の下に歩いていった。

――……何て言うことだ。私が少しだけ目を離していた隙に犬が増えていた。しかもライチと遊んでもらっている。一応ありがとうございます。いやいやいや、それはさて置きこれは誰の犬だろう。どっかで見たことあるようなないような気がするが。

「えーと、どちらさんですか」

「バウバウッ」

「わんっ」

「うーん、解らないや」

答えてくれたのに申し訳ないが如何せん、全く解らない。だって私人間だもの。
犬は成犬で青い毛色をしている。片目は大分前に怪我をしていたのだろう、大きな傷跡があった。体つきといい雰囲気的にどっかで見たことあるんだけどな。なんか態度というか仕草が似ているんだよね、彼に。

「なんかさ、ランバートに似てるね。確か子どもの名前がラピードだったっけ」

「バウバウッ!」

「――……ラピード!漸く見つけたぞ。ったくよ、いきなり走り出したかと思ったらお前は……」

うん、後ろからなんか声が聞こえてきた。どうやらこの子(犬)はラピードって名前らしい。でもなんだろうな。何だか聞いた事があるような声がする。ゆっくり振り向くと、そこには騎士団の中でも有名な人が居た。ユーリ・ローウェルだ。





(そういやユーリ・ローウェルって常習犯だったよね……)






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