わんこな日々

□私
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騎士団には移動するのに使う魔物を育てたりと、他にも様々な生き物がいる。そう、例えば軍用犬。つまりは犬(わんこ)だ。
私、キオは騎士団に所属し軍用犬を育てる業務を行っている。今も尚、軍用犬は魔物討伐や人命救助をする際に用いられているのだ。

「わんっ!」

「んー……おはよう、ライル」

重い瞼を上げようとするが、なかなか持ち上がらない。まだ眠たいのだろうが、せっかくの相棒が朝の挨拶をしたのだ。これは何が何でも返事をしなくてはならない。そう思うと、なんだか目が覚めてきた気がする。気持ちだけで実際は眠いままなのだけれども。
相棒のライルが舌で私の顔を舐めているが、眠いものは眠い。仕方ないよ、だって人間だもの。
さて、今日は久しぶりに犬小屋で寝たようだ。ここ最近では珍しく自分の部屋で寝ていたというのに。周りでは私が育てた、あーんど育てているわんこたちがまだ眠っていたりと起きていたりと様々だ。

今日の日程はどうだったっけ。…確か普段通りだった気が…す、るようなしないような……。まあ朝礼とかあったとしても自分は行かなくても大丈夫だろう。仕事は軍用犬を育てることだから。うん、多分大丈夫。何より、いつもさぼっているから。そうと決まれば犬達に朝ご飯を配らなくては。

「ライル、朝ご飯取ってくるからお皿の用意頼んだよ」

「わんっ!」

相棒に言うと、待ってましたかのように立ち上がり私より早く棚の方へ駆けて行ってしまった。あーあ、これでは彼の相棒として失格かな。そう思うと、次の行動は早かった。素早く藁の中から立ち上がると、餌が置かれている棚へ向かった。途中、犬達の毛艶を見たりする。
餌は子犬達が届かないような高い場所にあるが、大人の犬達は余裕で取れる場所にある。それを数箱取り、片っ端から開けていく。ドッグフードの独特な匂いが、辺り一面に広がっていく。すると、その匂いを嗅いだ子犬達はご飯が貰えると解ったのか、ぽてぽてと一目散に駆けてきた。ライルの子ども達だ。近くまで来ると、私の足元でウロウロし始めた。邪魔だなと思いながらも、ライルが用意してくれたお皿の中にご飯を順番に入れていく。大人の犬はおとなしく待っているが、子犬達は我慢が出来なかったのか勢い良く食べ始めてしまった。あーあ、いつもは合図するまで食べたら駄目って躾をしていたのに。仕方ない、またはじめからだ。

それぞれのお皿の中のドッグフードが無くなってきた。そろそろミルクでも持ってこようか。さて、思い立ったらすぐ行動。キオは、すぐさま立ち上がった。

「ミルクを持ってくるからおとなしく待っててよ。ライルと…………んー、ライカで良いか。付いて来て」

「わん!」

「わふ!」

ここから食堂まではそんなに距離はないだろう。だが、ミルクを持ってくるには手が足りない。なので、相棒であるライルにその奥さんのライカを連れて行くことにした。すると、どうだろうか……後ろからこの二匹の子ども達が付いて来てしまった。ザクロとライチだ。もう一匹ファインという子がいるが、今は訳あって違う場所にいる。はぁ、とため息をつく。人が多い場所に成犬はいいが子犬は少し無理がある。キオは、子犬達の首根っこを掴むと近くにいた犬に渡した。付いて来ないように見張っていろ、という意味で渡したのだったが、子犬達は「行きたい行きたい!」と、言っているかのように暴れ出した。いや、実際にそう言っているのだけれど。仕方ないっちゃあ仕方ないが結局連れて行くことにした。軍用犬の候補であるこの子達(子犬)を甘やかすことは基本的に出来ない。だが、ミルクを取りに行くのを手伝ってもらうのに選んだ犬が悪かった。なんたって、この子達の親犬なのだから。まだ小さい子どもにとって親と離れるのは嫌だろう。だからこれは“仕方のないこと”なのだ。


▽▽


「おはようございまーす。ミルクとついでに私のご飯下さい」

「おはよ……あらま!キオちゃん今日は早いわねー。ミルクはそこにあるのでキオちゃんにはホットサンドでいいかしら」

「大丈夫です。あ、多めでお願いしますね。今日外周する予定なんで。あと、水を数リットルお願いします」

要件をつらつらと並べる。毎回かなりの量を頼んだりするのだが、食堂のおばちゃんは快く返事をしてくれる。ありがとうと何度も言っても言い足りないだろう。

「おばちゃん、毎日ありがとうね」

「いえいえ、おばちゃんこれが仕事だからね。キオちゃん今日も頑張ってね」

「はいはーい」

こうやって私の仕事ははじまるのだ。
仕事柄、犬と関わるが人間とはあまり関わらない軍用犬を育てる業務。いつもなら、私はこのまま犬小屋へ行く予定だった。そう、誰とも会わずに。なのに、どうしてだろうか……。

「大丈夫?手伝うおうか」

騎士団長に会ってしまった。





(……なんでいるの?)





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