短編

□断じて認めないから
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君に愛の言葉を
に企画参加した作品です。


あたしとユーリは、所謂幼なじみの関係だ。幼い頃は遊ぶのも喧嘩するのも、おやつを食べるのも一緒だった。あ、勿論フレンも居た。更には、ハンクス爺さんに内緒で森の中に行った事だってある(これにフレンは居なかった)。そんなユーリとあたし(+フレン)は長い長い年月を経て今では立派な大人だ。フレンは騎士団に所属していて、ユーリは……フリーター。あたしは酒場で働いている。働いている場所が場所なのかは解らないが、ユーリはあたしの職場へちょくちょく来る。用事もないのにね。だから暇人かと思う時が多々あるけど、反対にとても忙しそうな時だってある。そして、気がついたらまた牢屋の中に入ってたりなども度々ある。まぁ、どうしようもない奴だ。

「おい姉ちゃん、また兄ちゃんが来たぞー」

「よっ!」

「えー……」

「何だよその反応は!」

だってこの前牢屋に入ったばっかなのにどうしてここに居るんだろう。あれ、この前ってどの位前だっけ。駄目だ思い出せない。あたし日にちとか大まかだからな。やばいやばい、今度から気を付けなくちゃ。………じゃなくって、何でまた来てんのかな。常連さんの人もユーリが来ると慣れたようにあたしに知らせてくる。なんでかなー。まぁとりあえず言うことは一つだ。

「帰れ」

「たった今帰ってきたのにか。お前なー、そんな態度は止めろよな。何か傷付くし」

「勝手に傷付いてれば良いじゃない。どうせ何も用が無いのに来たんでしょうが」

おそらく今さっき牢屋から出て来たんだろう。そんな雰囲気がある。あたしは、お客さんにお酒を出しながら横目でユーリを見た。あ、ちょっと。自分の家の様に寛がないでよ。

「おいおい、仮にも幼なじみなんだからそんな冷たい事言うなって」

「仮にも幼なじみとしても牢屋に行きまくってる奴は知りません」

「おーっと、お前そんな事言うのか。そりゃあねぇだろ。騎士団がだなー」

あーあ、また始まったよ。確かに原因は全部騎士団絡みだけどさ。いい加減牢屋に入る事解ってんなら止めたらいいのに。
あたしはユーリの目の前で大きく溜め息をついた。

「はいはい。何もないなら帰ってよ。あたし今何してると思ってんの」

「俺の話し相手」

「ふざけんなよ」

もう本当に殴ろうと思った一瞬“今あたしは仕事中”と、いうことが過ぎった。駄目だ駄目だ。ユーリを殴りたくても今は仕事中。色々駄目だ。
あーもー。本当にコイツどうしようかと思い始めた時、店長の声が聞こえた。

「今日はお店もうしまうから上がって良いよ」

「え、」

「ほら、ユーリも来てるしね。ユーリ、ちゃんと一緒に帰るんだよ」

「わーってるよ」

またか。一体今何を話しているか直ぐには解らなかったが数秒後に瞬時に理解した。
ユーリはよくあたしを迎えに来る。家が近いからついでだか知らないけど。だから店長も解ったのだろう、ユーリが来ている理由を。あたしはそんなやりとりを他人事の様に見ていた。店長に上がって良いと言われたけど、流石に駄目だろうと思う。あたしは残っている皿洗いだけでもしようと洗い場に行った。
でも、結局店長さんに帰りなさいって言われて手伝えなかった。絶対ユーリのせいだ。

「ユーリの馬鹿。あんたのせいで仕事手伝えなかったじゃん」

「別に良いだろう、どうせ店長もそろそろ店閉めようとしてたし」

「…………」

「あ、俺の部屋にプリンあるけど食うか」

「そんなんであたしの機嫌はなおりません」

「そりゃ残念」

何が残念だ。まだ仕事残ってたのに。あ、そうだ。明日はいつもより早く行こう。そんでもって遅く帰ろう。ユーリ来てもそこはスルーしとこう。よし、決定。

「てかなんでいっつも迎えに来るわけ」

「そりゃあ好きな奴が夜遅くに歩いてたら誰だって心配するだろ」

「…………あー、幼なじみだからね。どうも、アリガトウゴザイマス」

「だから好きだからだって」

「……はぁ?」

何言ってんだろこいつ。ユーリを見ると、至って普通だ。あぁ、聞き間違いなんだろうか。いや、でもそうだったら何を聞き間違えたんだ。
……いやいやいや、有り得ない。絶対に有り得ない。ユーリがあたしの事を好き?……ないわ。

「なんだろー疲れたのかな。よく解んなかった。もっかい言って」

「俺、お前の事好きだから」

少しだけ微笑みながら言うユーリ。あぁ、やっぱり格好良いな……って違う違う。聞き間違いなんかじゃなかった。ハッキリ聞こえてしまった言葉が頭の中で何度も何度もリピートされる。

「お前全然気付かねぇもんな。周りにはバレバレだったけど。ま、そう言うことだから。またな」

自分が言いたい事だけ言って、あたしを家まで送って帰ってしまったユーリ。何だよ。いきなり訳解んない事言ってさ。どうしてこんなにもあたしはユーリを意識してんの。むかつく。こんな気持ち絶対に認めてやらないから。





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