前世の記憶(TOA)

□第二章〜記憶のない人形士〜
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ス「でもでも、悪い奴じゃないんだよ?後をつけるのは私を守ってくれる意味でもあったわけだしさ」

ル「守る…?」

ス「んー…私よくいじめられてたんだよね。家が貧乏でぇ…本当困るよね、親が親だとさ」

ジ「……ここでもか…」

ル「ジェイド?」

ジ「ああ、なんでもないですよ」

ル「…?」

ス「ま、でも、その度にお兄ちゃんが助けてくれたってわけ!」

ジ「…それはそれは…いい人になったものですね」

本心から言ってるのか怪しいそれに、スニアは喜べたものではないが、ルークからすればジェイドはそれなりに感心しているように思えた。

ス「それで?あんた達は?」

ル「え?」

ス「私が話したんだからそっちの事情も聞いていいはずだよね?お兄ちゃんを知ってるみたいだし、譜術なんて子供がどうこう言って使えるものじゃ…」

ジ「…アニス教団では子供でも譜術を使える人などたくさんいるでしょう。」

ス「それでも下級譜術がせいぜい使えるくらい。中級譜術を使う子供なんてそうそういないでしょ」

ジェイドとルーク、特にジェイドを怪しむスニアに、ジェイドは余裕の微笑みで答える。

ジ「ははは。そうそういないだけで、全くいないわけではありませんよ。詮索されようとこれ以上話すことはありません。」

ス「…むぅ〜っ」

ル「ジェイド、いいのか?」

言い返せなくなって頬を膨らますスニアを見ながら、小声でジェイドに話し掛けるルーク。ジェイドは笑みをふっと消えさせ、真剣な表情でスニアに聞こえない程度の声で応える。

ジ「前世の記憶がないのです。変に話しては敵に回してしまうでしょう。」

ル「けどよ、アニスの生まれ変わりなら、前世と同じ人形士なわけだし、旅に連れていくべきじゃ…」

ジ「それは考えました。しかし、ドッペルゲンガーの可能性もあれば、レプリカである可能性も捨て切れません。確証もなく、訳を話して仲間にするには荷が重すぎます。」

ル「それもそうか…」

ジェイドの言い分にルークはあっさりと納得する。実に単純である。

ジ「まぁ、できるなら戦力に入れたいとこではありますがね。おそらく以前と強さは変わっていないようですし」

ル「わかるもんなのか?」

ジ「えぇ、長年の勘みたいなものです。」

ル「へぇ…、便利だな」

ス「ちょっとぉ!スニアちゃんを置いて何話してるんですかぁ!」

こそこそ話す二人に痺れを切らしたように大声を出すスニア。この声には周りの者もざわざわとして何事かと三人を見る。

ジ「まずいですね。周りの気がこちらに向けば、軍が私たちに気付くのも時間の問題です。」

ル「な…っどうすんだよ!この戦利品見られたらさすがに騙し切れねーだろ?」

ス「何々?軍に追われてるの?」

ジ「…ルーク、逃げますよ」

ル「え…っおい…」

ス「ち…っ逃げられたか。やっぱり追われてるんだ!金の為に捕まれぇ〜!」

ジェイドはこれを予想していたかのようにルークを引っ張って走る。ルークはスニアの極悪な表情に表情を引きつらせながら、ジェイドの足についていく。

しかし、訓練はしてきても体力はそこまでない。すぐにジェイドの体力についていけず、ルークが足を躓かせた。

ル「うわっ」

ジ「ルーク!」

ス「大人しく、捕まりなさーい!」

ルークが転んだのを幸いに、スニアは人形をでかくし、ジェイドとルークに近づいてくる。

ジ「ち…っ唸れ烈風!大気の刃よ切り刻め!タービュランス!」

ス「え…」

「紫電の槌よ、ビリビリにしちゃってー!スパークウェブ!」

ジ「何…っ!?」

ジェイドの譜術は突然現れた少女の声の者によって消された。スニアはというと、人形を小さくし、へなへなと座り込む。ルークはパッパッと砂埃を払いながらジェイドの術を消した者へと目を向けた。

ル「な…っ」

ジ「まさか…」

「妹をいじめるなんて許さないんだから〜っ!アニスちゃんを敵に回したら…ってあれれ?」

ル「アニス…が、二人?」

ジ「妹と言っていたが、レプリカの可能性も…」

ア「はわわわ…ルーク様に、大佐ぁ!?で、でも子供だし…あれ?でも似すぎ…っ」

ジ「ほぅ…どうやら、前世の記憶があるようですね」

ル「じゃあ、こっちが本物のアニスってことか?」

ア「本物も何もレプリカじゃないよぅ?スニアは私の双子の妹だもん!」

ジ「双子ですか〜…いやぁ、似すぎてレプリカかと思いましたよ〜。ついにアニスも、とね」

ア「何言ってるんですかぁ☆大佐こそレプリカじゃないですよね〜?」

ジ「ははは。そんなわけないじゃないですかー。」

ア「ですよね〜!大佐がレプリカといえ、何人も存在したら大変ですしぃ」

ジ「どういう意味ですかねぇ、アニース?」

意気投合とも言える二人に、置いてきぼりのルークとスニア。ルークは前世の記憶もあり苦笑いだが、スニアはただきょとんとしている。
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