前世の記憶(TOA)

□第一章〜旅の始まり〜
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ジ「出入口ですね…。ルーク、そちらの稽古用の剣はもういらないでしょう。」

ル「あ、ああ」

ジ「元々武器が見つからず木で作ったものですから捨ててしまいなさい。私の槍ももういりませんね。」

ル「自分のも作ったのか?」

ジ「木では頑丈さにしても、切れ味にしても限度がありますから」

ル「そうだな。稽古だからって木の剣でする事はないしな」

ルークとジェイドは稽古に使っていた剣と槍を出入口付近に捨てていく。こんなところに捨てていいものかと思うが、ジェイドの判断ならかまわないだろうと、ルークは深く考えない。

森から出て少し歩けば村へと着く。まだ誰も家から出てきているものはいない。

それもそのはず。今はまだ早朝なのだ。夜中から稽古をする二人は睡眠時間も極端に少ない。ルークと自分の分の剣と槍を作っていたジェイドに関してはほぼ寝てない日が多いだろう。

そのため二人は、無理に稽古をせず、稽古の休みなどを作ったりもしていた。朝や昼に寝てもいいが、毎日それを続ければ怪しまれてしまう。

そのために休みを作りざる終えなかったのだ。

二人はそっと自分達の家に帰れば、寝室へと行く。いつもなら親が起きるギリギリまで稽古をして帰るのだが、今回は殺意を持つ村人のせいで早めの帰宅となり、少し寝る時間があった。

ジ「さて、寝るにしても起きられるか不安ですね」

ル「寝ろよ、ジェイド。俺が見張っとくからさ」

ジ「しかし…」

ル「ったく!つべこべ言わずにさっさと寝ろ!剣とか稽古の礼だ!」

ジ「久しぶりに短気な貴方を見ましたね」

ル「うっせぇ」

ジ「たまにはそうやって吐き出すことも大切です。私の責任でもありますが、何もかもを溜め込む必要はないのですよ。今は前世と違います。私はずっと貴方の味方であることを忘れないでください。」

ル「わかってるっつーの!自分責めるくらいなら寝ろってんだ」

ジ「ルーク、それなら貴方も自分を責めるのはおやめなさい。では、お言葉に甘えて寝させていただきましょうか。」

それ以上の言葉を言わず疲れていたのか、ジェイドからはすぐに静かな寝息が聞こえてくる。ルークは何もないか、慣れない見張りをしながらジェイドをちらりと見た。

ル「ジェイドが味方とか恐いものなしにもほどがあるよな」

ただ静かに呟いて消えていく言葉。その言葉に寝ているジェイドが少し反応したような気がしたルークだが、気のせいだろうとすぐ判断した。味方であろうと、ジェイドの何からぬ仕返しは怖い。複雑な気持ちになりつつも、ルークの胸はつっかりが消えたように温かくなっていた。



















そして朝。

眠そうな顔で欠伸をしながらルークはジェイドを起こし、リビングへ行く。そこには親がおらずただ朝御飯が用意されているだけ。

ジ「相変わらず恐がっているんですかねぇ」

ル「朝食用意してくれてるだけでもありがたいだろ?」

ジ「そうですね。まぁ、あの人達を親とは思えませんし、どちらでもいいのですが。」

ル「そんな事言うなよ。確かに母上や父上が懐かしくなることはあるけど、それでも今はあの人達が親なんだからさ」

ジ「子供を見捨てる親なんてものは、親とは言いませんよ。食べる気にもならない。」

ル「何してんだよっ!」

ジェイドは無表情でルークと自分の、お互いの料理の乗った皿を手で凪ぎ払う。ルークはすぐカッとなり料理を拾おうとするがジェイドに止められる。

ジ「触らない方がいいですよ。毒が入っていますから」

ル「毒っ!?」

ジ「粉性の毒です。液体だと匂いがきつくバレると判断したのでしょう。まぁ、粉は溶けにくいということまでは判断できなかったのだと思います。ここの村人は平和過ぎて人を殺すことに慣れていませんからね。こういった知識が浅いのでしょう。」

ル「ジェイドって薬物にも詳しいのか?」

ジ「えぇ、前世薬剤師の資格も取ってはいました。」

ル「それも俺が消えた後で?」

ジ「もちろんですよ」

ル「他にもまだまだあるんだろ?」

ジ「暇潰しに色々してましたからねぇ…。あまり覚えてはいませんよ。」

ル「嘘だな」

ジ「おや、信じてはもらえないのですか?」

ル「ジェイドが忘れるとかありえねーだろ!」

ジ「ルーク…、貴方は私を何だと…。まぁ、いいです。ルーク、剣を取りに行きなさい。」

ル「剣?なんで…」

ジ「食事に毒があると言うことは、私達の今の親と村人達が私とルークを殺そうとしているということです。もうここにはいられません。」

ル「わかった」

真面目な顔をして言うジェイドに、ルークはバタバタとして寝室に剣を取りに行くが、すぐに悲鳴があがった。

ジ「ルーク!」

ル「だ、大丈夫だ…ジェイド。剣もどうにか…」

ジェイドが素早く駆け付ければ、そこには尻餅を着き、剣を握っているルークと、ルークを殺そうとルークに歩み寄ろうとしていた村人がいた。
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