青の祓魔師
□合宿での出来事
6ページ/7ページ
「いい判断ですね。皆さんも奥村くんの捜索にあたってください。しかし、バラバラに探すのでは危険が伴います。そこを考えながら行動してください。」
「「「「「はい!」」」」」
候補生の返事と共に燐の捜索は始まる。雪男だけで一人、勝呂と志摩で二人、しえみと神木と三輪で三人というチーム分けでそれぞれ捜索を始めたのだった。
「兄さん!いたら返事をして!」
雪男は手際よく銃で低級悪魔を倒しながら燐を探す。しかし、例え天才祓魔師と言われる雪男でも、広い森の中で燐を探すのは困難のようだ。
「奥村くーん、はよ出て来てやー!うぎゃーっ虫!虫!」
「あほ!それは悪魔や!」
「悪魔かて虫にとりついてんねんやったら、結局虫ですやん!」
「ったく…魔除け用花火使えばええ話やろ!」
「あ、それええですやん!」
志摩、勝呂チームは、志摩の虫嫌いのせいで燐の捜索どころではなさそうだった。
「ニーちゃん、虫よけの植物出してくれる?」
『ニー!』
「杜山さん、助かりますわ!奥村くーん!」
「見つかる様子はないわね…。一体どこにいるのよ…っ」
三輪、神木、しえみチームは、しえみの使い魔グリーンマンによって、三人に低級悪魔が近寄ることはなく、燐捜索に張り切ることができていた。しかし、見つかる様子はない。
そして肝心の燐は……。
「よっしゃあ!後は中級悪魔さえ倒せば元通りだな」
みんなの心配を余所に、降魔剣で次々に低級悪魔を倒し、中級悪魔に近づいていた。
そんなこんなで日は暮れて行き、悪魔の活動もより活発となる。結局燐を捜し出せなかった雪男たちは、森から出て、燐が出てくるのを待った。
「兄さん…っどこに…」
「先生、さすがにこのままやと低級悪魔以外にも出てくる可能性ありますし、危ないんとちゃいますやろか?」
「皆さんは寮へ戻ってくれてかまいません。」
「わ、私は待つよ!だって燐が心配だもん!」
「杜山さんだけやない。みんな奥村が心配なんや…。何言われようと帰りません!」
「仕方ないから付き合ってあげるわ」
「しゃあない、俺も待ちますわ。女の子二人置いて帰るなんて男としてどうかと思いますし」
「みんな、気持ちは同じですね」
「ありがとうございます。皆さん…。兄がすみません。」
「奥村のことは今に始まったことやないし、子供な分心配なのも皆同じやろから、先生が謝る必要はないですやろ」
「それでも…」
「よぉ、雪男!」
「兄さん!」
森から出てきた燐にばっとみんながそちらに向く。どこかしら傷だらけであるが、本人が気にしている様子はない。
「中級悪魔倒してきたぞ?」
「はぁ!?子供の癖してどないして倒したんや!」
「信じられない…。なんなのよ、こいつ…。」
「燐って子供でも強いんだね…」
「あかん…。奥村くん、子供のはずやのに宇宙人にしか見えへんわ」
「はは…っ」
気の抜けた候補生たち。燐が無事だったことに安堵したのだろう。
だが、一人は違った。
「兄さん!なんで一人で行ったんだ!僕がどれだけ心配したか…」
「何だよ…倒したんだからいいだろ?」
「……遊びじゃねぇんだぞ」
「わ、わりぃ…」
「…兄さん、反省した?」
「あ、ああ…」
「信用できないけど、まぁいいかな。じゃあ今日はもうおしまいとします。寮に戻りましょう。」
一瞬だったが、雪男の黒い部分を見てみんなは返事を忘れて呆然としていた。
「か、帰るか」
「そ…そやね」
「坊、子猫さん…。あの二人、きっとどっかの星の人なんやに…きっと」
「ば…ばっかばかしい!何怯えてんのよ」
「出雲ちゃん、強いなぁ」
「雪ちゃんって怖いねー…」
「杜山さん、大丈夫やろか?なんか遠い目しとるけど…」
「しょうないよ。あの奥村くんでさえ、黙って奥村先生についてくくらいやし…」
まだ少し怯えるようにして雪男を見る候補生たち。雪男の片足には、燐がズボンを掴んでちょこちょことついていっている光景がそこにはあった。
傍から見れば、親に怒られた子供が落ち込んでるように見えなくもない光景だ。