青の祓魔師
□合宿での出来事
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時間はすぐに経ち、それぞれの用意を終えて候補生たちは森の前に集合していた。
「なんや、先生遅いな」
「一番最初に食べ終わってたのに、何しとんやろなぁ…。奥村くんもおらへんし…。」
「やっぱり奥村先生も奥村くんが心配で、連れて行きたくないんかもしれんよ」
「だからってこんな暑い日差しの中で待たされるなんて冗談じゃないわよ!」
「か、神木さん…大丈夫?」
「大丈夫に決まってるでしょ!」
「出雲ちゃん、イライラゲージがやばそうやね…」
「皆さん、お待たせしました!」
「わりぃな、遅れた!」
「ようやく来たか…って…なんやそれ!?」
遅れて来た二人。勝呂は燐の姿に驚いた。驚いたのは勝呂だけではない。声を出さないのは声を出せないほど驚いたからだ。
「どうしたんですか?皆さん」
「雪ちゃん、それ魔除けの道具…だよね?」
「はい、そうですが…」
「つけるにも限度あるやろ!」
燐の姿、それは魔除けの道具をびっしりとつけている魔除けの道具だらけの姿だった。いくら魔除けだといってここまでつけると怪しい子供だ。
「兄さんに…、奥村くんに何かあっては大変ですから。これくらい普通でしょう。」
「でも動きにくいぞ?」
「大丈夫だよ、兄さん。もし危なくなったらとにかく魔除けの花火をあげるんだ」
「魔除けの花火だけでどんだけあるねん!?」
「こんなんじゃ、下級悪魔どころか中級悪魔も出てくるかわかんないわ…」
「出なくてもいいでしょう。兄さんへの危険が減りますから」
「でも、そない心配なら、聖水かけた方がええんとちゃいますやろか?奥村先生、心配しすぎて基本的なこと忘れてはるんですか?」
「…それは考えました。けれど、兄さんに聖水をかけるわけにはいかないんですよ。」
「なんや、心配しとるんかしてないんかわからへんな…」
「心配してますよ!ですが、兄は…その…聖水アレルギーなんです!」
「せ、聖水…アレルギー…?そないなもん、ありますの?」
「聞いたことないで…、そんなアレルギー…」
「と、とにかく!アレルギーのせいでかけるわけにはいかないんです!さっさと訓練始めてください!」
「やけくそね…」
「あんな雪ちゃん始めて見るね」
雪男らしからぬ態度に候補生は呆れ返る。どう見ても子供の燐に振り回されているようにしか見えないからだ。
「まぁええ…、始めるなら奥村も同時にや。子供一人とはいえ、俺らから始めるわけにもいかんからな」
「いえ、兄さんは僕と二人で…」
「あんた教師やろ!?あんだけ俺らを怒鳴っときながら、今更奥村を離せへんなんて大概にしときや!」
「ちょ、坊…、相手は若先生やで?」
「あ…す、すんません…。生徒の分際で言い過ぎましたわ…」
「別に間違ってないわよ!そんな心配なら、一人にさせなきゃいいんだから」
「い、出雲ちゃん…勇ましいわぁ」
志摩に言われ畏まった勝呂を見ては神木が強気に言い張る。その姿に志摩は尊敬の眼差しを向けるが、神木が気にする様子はない。
「一緒にとは…?」
「わざわざチームに分けず、一緒に中級悪魔に挑めばいいと思います。どうせ理事長が見てないなら大丈夫でしょうし。教師は奥村先生だけなんですよね?」
「はい、今日は僕だけです。」
「なら、生徒の安全のために結局一緒の行動を見ることになったってことでいいんじゃないですか?」
「それいいね!神木さんすごい!」
「これくらい誰にでも考えつくわ」
神木の言い分に誰もが納得する。しかし、それはもう遅かった。
「あれ…?肝心の奥村くんがおらへん気ぃするねんけど…」
「はぁ!?あいつ、どこ行きよった!」
「い、いつおらへんなったんやろか?」
「兄さん…!訓練は中止!皆さんはすぐ奥村くんの捜索に当たって…あれは!」
燐の捜索を頼もうと言い掛ける雪男だが、何か見つけたようにそちらへ向かって行けば、候補生たちは首を傾げる。
「どないしたんですか?先生」
「兄さんにつけた魔除けが全部ここに…!」
「はは…っ確かにあれだけあると外したくなるやろね」
「志摩さん、笑い事やないかもしれまへん。奥村くん、魔除けの花火も持ってった様子もないですから」
「えっ!?魔除け何一つ持たずに奥村くん何考えてはるの?」
「早く燐を探さなきゃ…」
「稲荷神に恐み恐み白す……為す所の願いとして成就せずということなし!」
早くも神木が使い魔、白狐を出す。
「白狐ですか…」
「この森の中に子供がいるはずよ。探してきなさい。見つけたらすぐ私に知らせて!」
白狐の二匹は神木に命令されれば、すぐ森の中へと入っていった。神木の行動力に、雪男は教師として感心していた。