青の祓魔師
□合宿での出来事
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そして翌日。朝から食堂に集まった候補生たちは燐が作った食事を食べながら、雪男の話に耳を傾けていた。
「…という訓練内容になります。」
「なんや…その訓練内容…」
訓練内容を聞いて一番最初に反応したのは勝呂だった。
「さすがに記憶も子供に戻っとる奥村くんを単独行動させるんは、危ないんとちゃいます?」
勝呂に続いて言うのは志摩。訓練といえど、燐に単独行動させることに候補生たちは反対する意を見せていた。
「僕も反対しました。しかし、命令では仕方ありません。それに、兄さんを元に戻すためには単独行動が一番だと言われてしまったので…」
雪男は何とも言えない表情で燐を見る。その表情はどこか心配そうだった。
「よくわかんねぇけど、そんな顔するんじゃねーよ!」
「はぁ…兄さんはこんな感じだし、理事長は考えあってのことでしょうから心配は無用かもしれません。兄さん、これは理事長からです。」
「なんだこれ?」
「兄さんを助けてくれる武器だと思えばいいですよ」
「そっか。ありがとな、雪男!」
雪男が渡したのは降魔剣だった。燐が昨日メフィストと会った時、メフィストに降魔剣を預けていたのだ。
「全く何考えとんや、理事長ちゅーやつは!」
「さすがの俺もなんか納得いきませんわ」
「ほんま、元に戻すやり方おうてるんやろか…」
「子供は一人で、私達だけは協力しろなんて納得できません!先生本当に抗議したんですか!?」
「雪ちゃん、やっぱり変だよ!これ!燐は強いけど、今は子供なんだよ?」
口々に食事を止めて雪男に向かって言われる言葉。雪男が少し俯くのがわかる。それにいち早く気付いたのは燐であった。
「お前らうるせーよ!雪男いじめんなっつーの」
「兄さん…」
「雪男をいじめるってなら、俺が相手してやるよ」
「り、燐?みんな、燐を心配して…」
「僕が兄さんを心配してないわけがないだろっ!」
「ゆ、雪男?」
しえみの言葉に一番早く反応しては怒鳴る雪男。燐は引きつった笑いで雪男を見る。候補生たちは呆然としていた。
「口々言うのもいい加減にしろよ?」
「雪男…顔がこえぇぞ?」
「…!ご、ごめん…兄さん」
「構わねぇよ!心配してくれてありがとな」
「兄さん、危なくなったら必ず僕を呼んでね…?すぐ兄さんを助けに行くから」
「わざわざ助けなんか呼ばなくても…」
「兄さん!返事は!?」
「へ?は、はい…」
「それでよし」
強制的なものに燐含め周りの者はひきつった表情を浮かべる。燐が子供になったからだろうか、雪男がますます過保護になっていて、身長差からどちらが兄なのかわかったものではない。
「は、はは…ほんまおっかないわ」
志摩の言葉に全員が頷きそうになったのも仕方ないと言えるだろう。
「さて、話の再確認ですが、訓練場所はすぐ近くの森です。あそこは下級悪魔の巣とも言える場所で、昼でも薄暗い場所のため、活発に動いています。下級悪魔だからといって、油断していては命を落としかねません。気を引き締めて行ってください。後、兄さん…奥村くんは単独行動となります。後はそちらで好きなようにチームを作ってください。」
「もう一つ確認だけええですか?」
「はい、かまいませんよ」
「目的はその森にいる中級悪魔の討伐ですよね?」
「はい、そうですね。」
「チーム作るんは、誰が一番最初に倒すかみたいな感じなんですか?」
「そうですね。今回ばかりは3チームで争ってもらいます。」
「争うって…祓魔師は、お互いに協力しあってやるものだと教わって来ましたが…」
「そ、それに、3チームって1つは奥村くんのことなの?」
「別に協力しあってやってくれてもかまいません。ですが、今回はそれぞれの技能を見たいので、無理に協力する必要はないです。しえみさんの質問についてですが、3チームの1つは奥村くんです。チームではありませんけど…。皆さんは2チームに別れてくれればいいですよ。では、食事を片付け次第、この近くにある森にまで来て下さい。」
「あ、雪男!片付けは俺がしてやるよ!」
「ありがとう、兄さん」
雪男は候補生たちの質問にすべて答えれば、食べ終わった食器を持って厨房へ行く。その後には燐が着いていき、和らぐ雪男の雰囲気に、候補生たちはほっと緊張を解くのであった。