青の祓魔師

□合宿での出来事
2ページ/7ページ

「俺が作ってやるよ!」

「え?兄さんが?」

「若先生、奥村くんって料理できますの?」

「現代の年代なら外に出しても恥ずかしくないくらいに料理はうまいです。実際学校の弁当も兄さんが作ってくれていますしね。ただ今の年代で料理ができていたかはうろ覚えで…」

「奥村が料理…?そ、想像できへん…」

「奥村くんやからね…。」

勝呂、子猫丸共々失礼な発言は燐の怒りに触れたようで、燐は椅子を一個持って厨房へ向かっていった。

それに気付かない者がいるはずもなく、心配か、不安か、燐に続いてぞろぞろと皆がついていく。

「り、燐!私も手伝うよ!」

「手伝ってやらないこともないわよ」

「材料はあるし、すぐできる。それに俺の料理をバカにされて黙ってられねぇ…」

そう言いながら手際よく料理を始める燐に雪男を除いて候補生たちは呆然とする。

「なんや…夢でも見とるんか?」

「坊、夢やない…夢やないで!?」

「奥村くん、慣れた手付きやね」

「燐、すごーい…」

「なんか…悔しいわね」

「あれなら大丈夫そうだな。兄さんの料理がうまくなったくらいの年なのかも」

そうして一人一人感想を述べる内に燐が作り上げた料理が完成した。料理は南瓜シチューである。

しかもシチューの皿は南瓜を半分に切り、中身をくり抜いた部分へと注がれていて、とても美味しそうな匂いを漂わせていた。

「ほら、できたぞ!雪男、運べ!」

「はい、兄さん」

「さっきから思うてたけど、若先生が子供になった奥村くんに兄さんってのは違和感あらへん?」

「まぁ、しゃあないやろ。一応奥村の方が兄なんやからな」

「それでもしっくりはこうへんね」

「ちょっと!喋ってる暇があるんなら、手伝いなさいよ!」

「燐、運ぶの手伝うよ」

「だめだ!お前らは客なんだから、座ってろ!これくらい雪男と俺で運べる」

「う、うん…ありがとうね、燐」

「礼なんて言わないわよ…」

「なんや…奥村くんがまともに見えるわ」

「ガキの頃の方が、よっぽどマシやったかもしれんな」

「はは…っとりあえず、ああゆうてますし、座りましょか」

食事の準備を雪男、燐に任せ、候補生たちは燐に言われるまま椅子へと座らせられる。そして数分もしない内に食事の支度が終わり、食事の挨拶をして皆が食べ始める。

「うま…っ子供の手料理とは思えん…」

「坊、子供の前に、奥村くんの料理と思えん美味しさですわ」

「確かに…。なんや、奥村は料理好きなんか?」

「おお、好きだぜ!料理はさ、上達すればするほど人の笑顔が見れるんだ!それに、雪男は医者になるための勉強してるから、夜食とか、疲れとるための料理とか、色々役に立てないかなって考えてさ」

「兄さん、だから料理を…」

「弟想いなんやな、奥村くん」

「当たり前だろ?雪男は自慢で大事な弟なんだからよ!」

「雪ちゃん、よかったね」

「え?」

「きっと燐は雪ちゃんが大好きだからあんなに笑顔なんだよ。私達の記憶がない今、初対面で警戒してもおかしくないのに、燐ってば自分より大人の雪ちゃんに安心しきってる。だから自然と私達を許してくれてるし、とても楽しそう」

「…兄さんが僕を…。でも、しえみさん。兄さんが警戒しないのは、しえみさんたちに優しさがあるからだと思いますよ。そういうのに兄さんは敏感ですから」

「ふふ…っそうだね。みんな燐に優しくしたいと思ってる。子供だからなのもあるかもしれないけどね」

「雪男!」

「うわっ兄さん?驚かせないでよ…」

「大きくても雪男は兄ちゃんがずっと守ってやるからな!」

「兄さん…、今は僕に兄さんを守らせて?」

「仕方ねーな!」

「ありがとう、兄さん」

笑って許す燐に、微笑みかける雪男。皆は食事をゆっくりと進めながら二人の様子を見守った。

それからと言うものの、食べ方が汚い燐の口を、ティッシュで雪男が拭いてやったり、食べにくそうな燐に雪男が食べさせてやったりという兄弟というより親子に似た光景が続いた。

周りはそれに呆れるも、いつもどこか疲れた表情の雪男が、楽しそうに微笑ましく燐の面倒を見ているため、からかったりする者はいなかった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ