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□父と父
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「「!」」

「よっ!邪魔してわりぃなぁ…。ピッコロ、今日こそ悟飯を返してもらうぞぉ」

「あ…あ…」

「悟飯、下がっていろ」

「でも!」

「大丈夫だ。安心しろ、殺しはせん」

「違う、違うよ!お父さんやめて!」

ここに来るまで、悟空の気を感じれなかったのは悟空が瞬間移動で現われたからだろう。

いや、そんなことは悟飯にとってどうでもよかった。セルを倒したのが自分でなく悟空ならば、ピッコロが神と同化しているかもわからない今、勝ち目はない。

もし誤って悟空がピッコロを殺してしまったら?

悟飯にとってこれほど怖いものはない。もし悟空がピッコロを殺してしまうものなら、自分は怒りで我を忘れて悟空を"また"殺してしまうのではないか。

悟飯は自分の力を恐ろしく思う。今の自分はピッコロにも悟空にも勝る力があることに…。

自分となる前のピッコロに育てられた悟飯ならどうしていたのか、悟飯は過去を変えてしまったことを今更ながら後悔する。

過去を変えなければ、ピッコロと悟空が争うのはあの一度限りで済んだのだから…

「あんまオラを舐めてっと痛い目見るぞ…。」

「俺はやられん」

「悟飯を返せーっ!かめはめ波ーっ」

「悟飯!」

「お父さん!」

もうどちらを呼んでるかもわからない悟飯。いきなり大技を繰り出す悟空に驚きを隠せない。

ピッコロは大丈夫だとわかっていても悟飯に当たりそうになれば反射的に守る。

そのためピッコロはまともにかめはめ波を食らうのだった。

「ぐ…っ」

「あ…、なんで…僕は…」

「泣く、な…。すぐ、治る…」

「え?」

ピッコロの大きな傷に狼狽える悟飯だったが、ピッコロの言葉に悟飯が傷を見れば、ピッコロの傷はみるみる内に治っていく。

「悟飯を守るためにドラゴンボールを使ったまでだ」

「まさか…永遠の命…?」

「安心しろ、そうではない。」

よくわからないと言った表情をする悟飯の髪をくしゃりと撫でればピッコロは再び悟空と向き合う。

「デンデの言った通り、簡単にはやられねぇんか」

「ふん…」

「デンデ…?デンデがいるの?じゃあ…」

デンデと言う名を聞いて、悟飯はピッコロが神と同化をしたことはわかったが、どういう経緯でなったのかがわからない。

その様子を見て悟空は何かに気付き話し始めた。

「悟飯、ピッコロがつえぇんは、ナメック星人と無理矢理同化していったかんだ。それも戦闘タイプじゃない奴関係なくだぞ…。ピッコロはドラゴンボールで好きな時にナメック星人と同化でき、そのままの能力をも得れるようにしたんだ…。しかもそれが永遠と続けれるよう、同化した奴は死んだことになるようにすんだからなぁ。だからナメック星人は一年ごとに死んだり生き返ったりのくりけぇし……、悟飯おめぇは許せんのかぁ!」

「…ピッコロさん、本当なの?」

悟空の話の内容に驚き、思わずお父さんではなく、ピッコロさんと呼ぶ悟飯。ピッコロは悟飯の言葉に静かに頷いた。

「オラは許せねぇ…。悟飯を奪ったと思えば、ナメック星人の同化を知って、命までをくりけぇし奪って…許さねぇぞー!」

「な、なんで…なんでそんなことをしたの?」

「最初は悟飯を守るためならとネイルという奴の誘いで同化したのが始まりだ。俺は二度も悟飯を守れなかった。いや、三度か…。ラディッツ、ナッパ、フリーザ…どれも孫がいなけれは守れなかっただろう。フリーザに関しては俺の責任だ…。俺が強くないばかりに死んでしまい、悟飯をナメック星へと行かせ、鍛えてもない悟飯が危険な目に合った。俺は悟飯を守るために力が必要だった。」

「僕のために…?」

「すまない、悟飯…」

「…っ……」

「悟飯、ピッコロから離れろ!オラたちのところへ戻ってくんだ!ピッコロはおめぇの父ちゃんじゃねぇ!」

「おと…さ…?」

「………悟飯…」

「悟飯!父ちゃんの言うことが聞けんのかぁ!」

弱々しいピッコロと、怒りのあまり超サイヤ人化となっている悟空。

二人の父なる存在に悟飯は困り切ってしまう。

悟飯を守るがために、ナメック星人を何度も生き返らせながら、同化して命を奪い力をつけてきたピッコロ。

ピッコロに赤ん坊であった悟飯を誘拐され、家族と過ごされるだろう日々をなくされたにも関わらず、ピッコロが守れなかった分代わりに悟飯を守ってきた悟空。

過ごした日々はピッコロが多くとも最終的に悟飯を守ってきたのは悟空である。

それでも悟飯の記憶の中でいつも危機に守ってくれたのはピッコロ。

ピッコロがいなければ悟飯は悟空がいようとも生きてはいなかっただろう。
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