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□師匠は過保護
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ブルマの言葉に意味を理解した悟空以外の一同はピッコロ、悟飯を見ながら口を揃えて言う。
普段なら聴力・聴覚と共に良いピッコロが多少離れていようと聞き取るのだが、今はオルゴールの音色と悟飯の嬉しそうな表情に夢中で気付いた様子はない。
「ピッコロさは過保護だっただな」
「なんか納得できちゃう気がするよ」
「ナメック星人は世話好きって界王様が言ってたぞ」
「ピッコロが世話好きかぁ……あの顔でか?」
「でも悟飯相手なら命懸けで守るくらいだし、別に変でもないと思いますよ?」
「それもそうか」
「チチさん、これで安心ね。きっと悟飯くんはピッコロが守ってくれるわ」
「よくよく考えりゃあ、悟空さより守ってくれそうだべ」
「オラもそう思う」
「悟空…、少しは悔しいとか思わないのか?」
「ピッコロはオラより悟飯を大切にしてっからな…、オラはいいと思う。それにオラは悟飯の父ちゃんであることに変わりはねぇ」
「悟空にしてはいいこと言うな」
「クリリン、オラだって言う時は言うぞぉ」
「それを言うなら、悟空さもピッコロみてぇに少しは悟飯ちゃんに対して過保護になるだ!悟空さは甘いからな、ピッコロさみたいに厳しくなるだよ」
「でも悟空が厳しくなるのは無理なんじゃないか?」
「悟空が厳しいのは闘いの時くらいですよ。ねぇ、ブルマさん」
「そうそう。孫くんやベジータみたいなサイヤ人はみんなそうなのよ。」
「ベジータはいつも厳しくないか?」
「あんな奴育児放棄よ!育児放棄!甘いどころの話じゃないわよ!」
「く、苦労してるなぁ…ブルマさんも…」
「本当よ!今はトランクスにトランクスを見てもらってるけどね」
「え?トランクスにトランクスを任せてきたんですか?修業は?」
「知らないわよ、そんなの!ベジータじゃ誤って殺すかもしれないんだから仕方ないじゃない!」
「ブルマさんの苦労わかるだよ…。悟飯ちゃんが不良になっちゃうような甘さを持ったのは悟空さのせいだからなぁ…、あれくらい厳しいピッコロさならもしかしたら悟飯ちゃんが不良にならずに済むかもしんねぇだ」
「ピッコロが悟飯に過保護だとわかった瞬間、チチさん変わりましたね。ピッコロの扱い…」
「そりゃ、悟飯くんのためになるんならチチさんも許すに決まってるでしょ」
「それもそうですね」
「お母さん!」
わいわいと話す一同の中に悟飯がチチを呼ぶ声が響く。悟飯の後ろにはピッコロがいて、周りを気にすることなく悟飯の様子を窺っていた。
「悟飯ちゃん、どうしただ?」
「セルゲームも近いでしょ?だから、今の内にお母さんとできるだけ長く一緒にいろってピッコロさんが……。」
「ピッコロさが…?」
思わず悟飯の後ろにいるピッコロを見るチチ。ピッコロは相変わらず悟飯に目を向けたままでいる。
チチが何かを言おうと口を開くと同時にピッコロが言葉を走らせた。
「悟飯、後悔だけはするな。今、言いたいことを言えばいい。」
「でも、ピッコロさん…」
「大丈夫だ。母親を信じればいい」
「はい…っお母さん…!」
「なんだべ?」
「僕…っ」
「ゆっくり言うだよ」
ピッコロに言われた通り何かを言おうと真剣な眼差しでチチを見る悟飯。
そんな悟飯にチチは優しく問い掛けては悟飯の言葉に耳を傾ける。
チチにはどんな言葉も受けとめれる自信があった。そんなチチを知らず悟飯は震えた声で話始める。
「僕、セルゲームに勝ちます。地球を守るために…。お母さんは不良みたいで嫌かもしれないけど、セルを倒したらすぐ前の僕に戻って勉強します。お母さん、僕の我儘を聞いてくれてありがとう。僕、お母さんがお母さんでよかったよ。」
「ご、はん…ちゃ…っ」
いつも怒ってばかりだったチチ。それは悟飯を愛するが故の愛情だと、悟飯は幼いながらもわかっていた。
そのことを言葉にされて伝わっていたのだとチチは思う。チチはただ不安だったのだ。
自分は厳しくすることでしか悟飯に愛情を伝えられないことが……
それでいつか自分から離れていくかもしれないことがチチにとって一番恐かった。
だが、ピッコロが悟飯に過保護なようにチチだって悟飯に過保護なのだ。
どちらも悟飯を愛しているからであって、繋がり方が違うだけ。
家族の繋がりと師弟の繋がり…どちらがいいのか悪いのかなんてない。悟飯が幸せならそれでいいのだ。
結局過保護になってしまうのは、悟飯の幸せを守りたい気持ちから愛するあまりに気を配り過ぎるだけである。
だからピッコロは悟飯のためなら命さえも捨てるし、チチも悟飯のためなら甘さをも捨てて厳しくなる。悟飯のためにならないことをさせないというのはどちらも一緒。
どんな愛し方でも悟飯には伝わっていたのだとチチは嬉しく思う。きっとピッコロもチチと同じなのだ。
ピッコロの愛し方も悟飯に伝わっている。要はそれを知るか知らないだけの違い。