悔いなきように(逆行TOA)

□プロローグ
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音譜帯をなんとなく感じる。俺は消えるのか、約束も果たせずに。………そんな風な考えが浮かんでは消える。

未練はありすぎるほどにある。だけど、どうしようもないこと。

―我が愛し子よ……2年、待つがいい。長くて短い年月だろうが、心配はいらない。音譜帯にはルークの仲間がいる。決して孤独にはさせない。2年後のためにも和解すべきだ。1つ目の未練解消するがいい―

ローレライの声。音譜帯に仲間とはどういうことだろうか?まさか、みんな逃げ遅れて?いや、それなら別に音譜帯とは別の場所にいく可能性の方が高い。

彼らは人であり、被験者なのだから。

なら、仲間とは、同じ存在の者なのだろうか。

それに今更だけど2年後に何があるのだろうか?

「君も消えたんだね。世界から」

ル「シンク……!?」

音譜帯なのに(音譜帯だからこそだろうか?)、姿がシンクそのものですぐにわかった。まさかローレライのいう仲間はシンクなのだろうか。

確かにシンクに対して未練はあった。同じレプリカとして分かち合えなかったこと、救えなかったことに。

シ「本当、バカだよね。あんたが音譜帯に入った瞬間、あんたの記憶と感情が流れ込んできたけど、まさか僕までもが君の未練になるなんて……あんたおかしいんじゃないの?」

ル「おかしい……のか?」

シ「おかしいよ。あんたあまりにも1人で抱え込みすぎ。その中に僕までいるんだから、救いようがないね。」

ル「でも、俺は……」

シ「わかってるよ。言ったでしょ?君の記憶と感情が流れ込んできたって。自分なんかが人に迷惑をかけちゃいけない、増してやどうしようもないことを話しても仕方ない……違う?」

ル「合ってる……な」

本当にシンクは俺の記憶と感情を理解してるんだと恥ずかしさと同時に、理解者がいることに心が軽くなるような気分だ。

シ「……僕は、ずっと君が羨ましかった」

ル「羨ましい……?俺が?」

シ「必要とされていた存在だったからね。君がアクゼリュス崩壊に利用されたことも、君の命によって世界が救われたことも。どちらも僕は羨ましかった。僕はヴァンに利用はされたけど、必要ではなかったからね。僕の代わりはそれこそ、導師以上にいる。だから、存在を必要とされた君が羨ましかったよ」

ル「シンク……なら、俺がシンクを必要としてもいいか?もう遅いかもしれない、俺はレプリカだから嫌かもしれないけど、それでも俺はシンクの存在が必要だ。」

シ「わかってるよ。どれほど君が僕を必要としてたかなんてね。驚いたけど、本音を言えば嬉しかったよ。同じ存在で、わかりあえる存在。君は支えがほしいわけでしょ」

ル「あの……今更でごめん。それに、これじゃあ利用してるみたいだよな」

シ「今君自身を知ってるから言えるけど、君本当に卑屈だよね。利用じゃなく、頼ってるって言えば?僕はルークがそう望むなら望むままに支えるよ。全てを知った今、僕は君を信用、信頼できざる終えない存在だからね」

ここに来て初めて呼んでくれた名前に、自分の存在をシンク自身が認めてくれているのだと感じる。

ル「頼っていいのか……?」

ずっと誰かを頼りたくて仕方なかった。でも、レプリカが被験者、それも大量に人の命を亡くさせたレプリカの抱え込むものを、被験者たちに話せるはずもない。彼らは俺たち化け物とは違う、人間であるのだから。

シ「それが次の僕の生きる理由になる。そう言えば頼ってくれる?」

ル「ありがとう……シンク」

励ましてくれるシンクに、不思議と違和感はない。シンク自身を自分もしっかりと受け止めた証拠だろうか。なんて考えてふと思う。シンクは次の生きる理由になると言わなかっただろうか……?


シ「なんか気づいた感じだけど、もしかしてローレライから聞いてないの?」

ル「何を?」

シ「2年後僕らだけが過去に戻って、過去をやり直すって話だよ」

ル「過去を……?」

シ「ローレライはまた解放してもらう必要はあるけど、少しでもルークの未練をなくさせたいっていうローレライの配慮らしいよ。」

ル「過去に戻れるのか……」

未練や後悔はたくさんあった。それをローレライはやり直すチャンスをくれるのか。こんな俺のために。

シ「やり直すのにはそれなりの準備が必要だから2年後までは僕と話すくらいしかできないだろうね。身体は見えても音譜帯だから、見えてるだけでしかないし。稽古とかは無理かな」

ル「1人より全然いいだろ?」

シ「それもそうだね」

2人して笑みを浮かべるのがわかる。まさかこうしてシンクと笑い合える日が来るなんて思ってもなかった。

過去に戻ったら、こうやって笑い合える時間と人が増える未来に変えたい。

今はただ互いをさらに知るために、シンクとの仲を深めよう。
 

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