青の祓魔師

□女子高生は見た!
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「いいのかなぁ」

「いいの、いいの!早く!雪男くんを見失っちゃう!」

学校も終わり夕方。古びた寮に似合わない影が二つ。それは雪男ファンの女子高生二人であった。

女とは恐ろしいもので、好きな人となると、どこまでもその人のことを知りたくなるのだ。そのためには親しくなるのが一番だが、雪男は優しくてもプライベートにまでは踏み込ませてはくれない。

つまり、雪男を知るためにはストーカーになる以外、方法がないのだ。女子高生はそのために雪男を追っていた。

そして現在、女子高生二人は雪男を誰よりも知るために、雪男と燐の住む寮へと侵入したのだった。

雪男というと、不覚にも寮を入る前からそわそわとしていたため、その気配に気付けないでいた。ちなみに言ってしまえば、そのそわそわの原因を知るために女子高生はストーカーを決意したのだ。

つまり、雪男のそわそわは今に始まったことではないことがわかる。そのそわそわはいつも同じ時間辺りに二度あるのだ。

一つは昼休み…四時間目の授業が終わると雪男は弁当を持って教室を出ていく。

それよりも早く群がる女子高生にはいつも決まった言葉。

「ごめん、用事があるんだ!」

本人はいつも通りに言っているつもりなのだろう。だが、女子高生の誰もがその時の雪男の変化に気付く。雪男は何かが待ち遠しいような、早く行きたくて仕方ないような子供っぽい仕草をとっていることに。

何しろ、言葉でさえ敬語がなくなってしまっているのだから。身体はそわそわし、表情は何かを我慢する様子。そんなギャップに女子高生はやられてしまう。

まぁ、つまりは、昼休みの追跡は、その雪男の可愛さなるギャップで誰も行えないのだ。だが、二つ目…雪男がそわそわするもう一つの時間、放課後は違う。

放課後はSHRが終わってすぐ雪男が帰るも、誰も何も話さない。雪男が自分の勉強や兄に勉強を教えるなどで忙しいと言うのを、周囲が知っているからだ。

そういうわけで、女子高生は雪男を追跡するなら放課後が一番だということで、今日実行することにした。今までしなかったのは勇気がなかったため。

しかし、今日は、昼休みの終わり頃から雪男の機嫌がいつも以上によかったため、ストーカー娘二人は気にならずにはいられなかったのだ。

「ただいま、兄さん」

「おう!おかえり、雪男」

そんなこんなしている内に、雪男は使っている部屋へと入っていき、女子高生二人はドアに耳を澄ませた。セレブ寮とは違い、防音でもないため、声は丸聞こえである。

女子高生二人もバカではない。バレないよう、声を出さないように、物音を立てないように、ただただ二人の会話に集中した。

「兄さん、今日はありがとうね」

「それは昼聞いただろ?何回言う気だよ。あれくらいで…」

「あれくらいじゃないよ。兄さんからのキスはさ」

「「っ!?」」

思わず女子高生二人は声が出そうになるが、慌てて手で口を塞ぐ。恋人でもない兄弟でのキス。純粋な女子高生には衝撃的だった。しかし、衝撃はこれだけでは済まない。

「…っはぁ…普通は彼女とかにしてもらうもんじゃねぇか?」

「嫌だよ。彼女を作るくらいなら兄さんといたい。」

女子高生はお互い顔を見合わせる。今まで彼女を作る気配がなかった雪男。もしかしたらそわそわの原因は、彼女がいるからかと思いもしたが、そわそわは入学式の次の日からあったため、可能性は低かった。噂も流れないために、雪男に彼女はいない。それは好きな人がいないためと皆が納得した。

だが、女子高生は今やっとわかったのだ。好きな人は関係ないと…。
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