前世の記憶(TOA)
□第二章〜記憶のない人形士〜
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軍の基地を後とし、都市の中を歩くルークとジェイド。ここは前世、ジェイドが大佐としていたマルクトの都市である。基地に連れられた時からジェイドは薄々ここがマルクトだと気付いていた。
だからこそバルカに大佐の名を聞いたのだ。だが、広い都市の中で二人はこれからどこへ向かえばいいのかわからない。
2000年もの月日が流れたマルクトの都市は変わってしまっているからだ。さすがのジェイドも困り果てるくらいに。
ル「なぁ、どうするんだ?」
ジ「困りましたね…。地図もなしにうろうろしては時間の無駄になりますし…。」
ル「どっかに売ってねぇのかな…」
ジ「それさえもわかりませんからね」
「お困りですかぁ?」
ル「ああ、ちょっとな…って、はぁ!?」
ジ「ルーク、大声を出すものではありませんよ」
ル「だ、だってよ…」
ジ「えぇ、私も驚いています。」
「?」
ジ「ああ、失礼。私、ジェイド・カーティスと言います。こちらはルーク・カーティス、私の弟です。」
ル「おい」
ジ「文句は後で聞きますよ。兄弟なのに名字が違うのはおかしいでしょう。」
ル「う…まぁ…」
ルーク・フォン・ファブレではなく、ルーク・カーティスと紹介され、すぐ突っ込むルークであったが、ジェイドはすかさずルークが納得できる言葉で言う。
兄弟と言われてはルークも言い返せない。実際、今、ジェイドとは血の繋がる兄弟なのだから。似てはいないが。
ス「私はアニス教団、副団長所属、人形士のスニアです!」
ル「アニス…教団?」
ジ「ああ、ルークは知らないのでしたね。アニスがイオン様の意思を受け継いで立ち直した新しい教団名です。」
ル「へぇ…アニスがなぁ…」
ス「…?あのぉ、さっきから何の…」
ジ「ああ、失礼。こちらの話です。教団の副団長さんでしたね。見たところスニアはまだ子供のようですが…」
ス「あんたも子供じゃん…」
ジ「何か?」
ス「あ、何でもないですよぅ」
ル「本当にアニスじゃねぇのか…?」
スニアの黒い部分に思わず顔を引きつらせるルーク。ジェイドは平気そうに見せ掛けの笑顔で笑っている。
ス「私、変な兄がいて、その人のおかげでって感じなんですぅ…。ただぁ、これ以上は乙女の秘密☆」
ジ「その兄が団長なんですか?」
ス「違いますよぅ!お兄ちゃんが団長なんてやったら、アニス教団終わっちゃうしぃ」
ル「お、終わる…?」
ジ「一体どんなお兄さんなんですかね…」
ル「けど、アニスを…じゃなかった…。スニアを人形士とさせれたくらいだし、頭はいいんじゃないか?」
「はっはっはぁ!その通りです!」
ジ「はぁ…この声は…」
「そこの貴方!いきなり初対面に向かって溜め息とはなんですか!」
ル「えーっと…確か、ディストだっけ?」
デ「そうです!その通り!しかし、貴方とは初対面ではなかったでしょうか?」
ル「え?あー…」
ジ「ルーク、答える必要はありませんよ。ディスト、まさか貴方がスニアの兄だと?」
デ「えぇ!この天才で美しい…」
ジ「ああ、そうですか。それだけ聞ければ構いません。独り言は迷惑のならない場所で願います。」
デ「最後まで聞けーっ!」
ジ「え?何か言いました?」
デ「きぃーっ!初対面でここまで私を侮辱させるとは、痛い目に合いますよ!」
ジ「ははは。痛い目に合うのは貴方の間違いでは?」
デ「もう許しませんよ!私のスーパーパワフルなつよしくんを見せて差し上げます!」
ジ「何ともセンスのない名前ですねぇ」
デ「うるさい、うるさい、うるさーい!」
ス「ちょっと、止めなくていいの?あんた、あいつの弟なんでしょ?」
ル「ん?大丈夫だよ、ジェイドなら。」
ス「どうなっても知んないだからね…」
ジェイドを信じて疑わないルークを見れば、スニアは変に文句も言えなくなる。そしてディストの機会とジェイドの戦いが……
デ「これでやられてしまいなさい!」
ジ「荒れ狂う流れよ。スプラッシュ」
終わった。
ル「な?大丈夫だっただろ?」
ス「う、嘘だぁ!」
デ「く、悔しい〜!」
ジ「バカですねぇ、相変わらず」
ル「生まれ変わっても人間変わらないもんだな」
ジ「えぇ、これで敵視されなければよいのですが…」
デ「貴方は敵です!ジェイドでしたね!?名前忘れませんからねー!」
ジ「無理のようですね」
ル「名前知ってるって…いつからいたんだ?」
ジ「最初からでしょう。出る機会を伺ってたのでは?」
ル「………」
ス「だいっせーかい!お兄ちゃんって目立ちがり屋なんだよね。だから、私の後をつけては、自分の話が出たとたん飛び出てくんの。」
ル「スニアも大変なんだな…」
ジ「同情しますよ。まさかストーカーにまで成り下がるとは…」