前世の記憶(TOA)

□序章〜プロローグ〜
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ルーク・フォン・ファブレが世界を救い、消え、英雄となった日から2000年以上の月日が流れ、また新たに前世の記憶を持つ生命が、ランバルという村に2つ誕生した。しかし、村人で気付く者はただ一人としていなかった。

前世の記憶を持つのは何の変哲もない親から生まれた兄弟二人。親は兄の名をローレ、弟の名をライとした。

この兄弟はおかしい。村人の人々の誰もが言った。特に兄の方は子供らしくない様子に誰もが嫌った。

笑顔もなく、名前を呼ばれようと本を読んで聞く耳すら持たない。やっと話したかと思えば敬語口調で、知識は誰よりも豊富。村の本だけでは学べないことさえも知っている。何より子供らしくない冷たい赤い瞳は誰もを拒み、村人や親でさえ恐がった。

だが、ただ一人、ローレが許す人がいた。弟のライだ。

二人は親につけてもらった名を無視し、兄をジェイド、弟をルークと呼び合った。どこまでも冷たい兄は、弟だけに表情を見せ話も聞く。

そのせいか、いつしかローレとライと言う名は忘れられ、自然と兄はジェイド、弟はルークと呼ばれるようになった。そして、今、ジェイドは5歳、ルークは3歳となる。相変わらず二人でいる兄弟。弟のルークまでおかしいとされるのは、兄のせいかもしれないが、ルークが気にする様子はなかった。

ル「ジェイド!何読んでるんだ?」

いつものように本を読むジェイドにルークが話し掛ける。ルーク以外のものならこの時点で沈黙だ。

ジ「貴方の話ですよ。ルーク」

ル「俺の話?」

ジ「英雄となった貴方のね。ローレライは何故私にまで前世の記憶を持たせたんでしょうねぇ」

ル「全く子供らしくないもんな!お前!」

やれやれと言った表情で言うジェイドに、ケラケラと笑うルーク。二人がお互い前世の記憶を持っているのに気付いたのは容姿があまりにも変わっていないからである。

ただ幼くなっただけで、性格も姿もあまり変わりようがないのだ。

ル「ジェイドさ、生まれた時どんな気持ちだった?」

ジ「面倒でしたよ。喋れますし、歩けますからね。ただ小さい内は食事には困りましたので、赤ん坊に化けましたが」

ル「だよな!俺、ジェイドいなかったら絶対赤ん坊の真似とかできなかったよ!」

ジ「でしょうね。ルークが生まれた時はまさか兄弟になるとは思いませんでしたし」

ル「トイレの時間帯を把握しているジェイドに、今の母上様は"赤ちゃんの気持ちがわかるの?"って驚いてたしな」

ジ「オムツいらずでしたからねぇ…。私はただ貴方に言われたからトイレに連れていっただけだと言うのに…。」

ル「世話かけたな!ジェイドはトイレとかどうしてたんだ?」

ジ「親の目を見兼ねてトイレへ行きましたよ。よく行方不明って大騒ぎされましたけどね。ですが、母乳が必要でなくなってからは親の目など気にせずトイレへ向かいました」

ル「だから恐がられるんだろ?」

ジ「いえ?その時はただ発達が早いとしか…。まぁ、笑わないし、泣かないしの赤ん坊で病気かと思われはしましたが」

ル「泣くのはともかく、笑うのは得意だろ?」

ジ「前世で笑い疲れたんですよ」

ル「じゃあ、何で俺には…」

ジ「ルーク、貴方は村人と同じ扱いをしてほしいのですか?」

ル「それは…嫌だけど」

ジ「でしょう?私はルークだけに本心で感情を出しているのですよ。」

ル「そっか…。」

ジ「まぁ、私が思うままに動くせいで、貴方までおかしな子とされるのは心苦しいですけどね」

ル「親の名前を無視している時点でおかしな子だろ?それに赤ん坊でもほとんどジェイドに育ててもらったみたいな感じだし、食事の時以外泣いてりゃ嫌になるもんだろ」

ジ「ああ、やりづらいからと私以外に抱き抱えられては泣いてましたしね。食事の時だけは母親のみに静かとは全く疲れます。」

ル「悪かったよ。でも、おかげで嘘泣きが得意になったんだぜ?」

ジ「全く…どこでそんなことを」

ル「案外できるもんだよな!あーあ、早く大きくなって剣術くらい学びたいよな」

ジ「腕が鈍りますからね。レプリカでない貴方なら譜術は使い放題勝手ですが、必要な時以外は使わないでくださいよ」

ル「わかってるって!つーか、譜術なんて使えるかも怪しいけどな!ジェイドの譜術は前世と同じくらい使えるのか?」

ジ「えぇ、まぁ…。どうせなら第七音素も使えるように生まれ変わりたかったですけどね。」

ル「ただでさえ強いのに、さらに望むのかよ」

ジ「おや、ルークは私が強いと?」

ル「強いだろ…。頭だっていいし…。」

ジ「まぁ、否定はしません。ここの村を誰にもバレないように焼き尽くすくらい容易いでしょう。」

ル「おい…マジでやるわけねーよな?」

ジ「しませんよ」

ル「そ、そっか…」

ジ「ただ、村人が私たちを消そうとお考えのようですから手は打たなくては」

ル「え?なんで…?」

ジ「やはり気付いてなかったのですね。彼らは私とルークを恐がっているのですよ。いくらかルークは前世の記憶を持つにしても消えたのが7歳なので子供らしいですが、それでも私のような子供の近くにいれば一緒に見られてもおかしくはないでしょう。」
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