青の祓魔師

□好きな人
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「雪男くん、これうちが作ったお弁当なんやけどよかったら…」

「私は家庭で作ったマフィンがあるんだけど…」

「こ、これ、あたいが前実家に帰った際に買ってきたお土産で…」

「えっと…ごめんね?昼のは兄が作ってくれた弁当があるし、お土産は嬉しいんだけど、忙しくて食べる機会がないと思うんだ。」

色々と差し出す女子高生に、雪男は苦笑いしながらできるだけ優しく断る。だが、そんなので諦める女子高生たちではなかった。

「ひ、一口でもええんです!食べてください!」

「マフィンだったら間食にもいいと思うの!」

「別に食べれたらでもいいので、お願いします!雪男くんに買ってきたお土産ですし」

「いや、本当に…。あ、兄さん!弁当があるのにまた購買うろついて…仕方ないなぁ」

「「「ゆ、雪男くん!?」」」

「あ、すみません。今は兄の弁当で十分なんで……。兄が心配なんでもう行きますね」

恋する女子高生は、雪男を引き止めることができず、兄とはいえ、男に雪男をとられたことに数秒間ショックを受けていた。だが、また復活し、三人で雪男のことについて意気投合すれば、コソコソとストーカーのように雪男を三人で見守りつつ、燐と雪男の会話に耳を傾けた。

「兄さん、また弁当が足りないの?」

「だってよー…あれだけじゃ、腹膨れないだろ?」

「全く…兄さんの食い意地には呆れるよ」

「う…うるせーっ!ゆ、雪男…今日はお前の好きなもん作ってやっからさ、焼きそばパン買ってくれねーか?」

「食費も僕が出してるはずなんだけど…。仕方ないな…、いいよ。後、弁当代増やすから、兄さんの弁当の量もっと増やせば?」

「いいのか!?」

「仕方ないでしょ?毎日この繰り返しってわけにもいかないしね」

「さすが俺の弟!雪男サンキューな!」

「これで抱きついてくれたら少しは可愛げがあるんだけどね」

「ん?こうか?」

「本当に抱きつくとは…。これで大好きと言ってくれれば…」

「言えるか!ボケ!調子に乗るんじゃねぇっ」

雪男に抱きつく燐、調子づいた雪男の頭を叩く燐などの行動と共に、先程までの会話を聞いていた女子高生たちは固まっていた。

「なんやの…あの兄」

「確か双子だったわよね?あそこまで仲がいいものなの…?」

「雪男くん、ブラコンなんですかね…」

「「ブラコン!?」」

「だって…、悔しいけど、あたいたちじゃ雪男くんにあんな笑顔向けてもらえないし、兄に可愛げを求めるなんて普通じゃ考えられないですよね…」

「う…確かに…。でも、雪男くんがブラコンなら、一番のライバルは雪男くんのお兄さんってことになるん?」

「あんながさつそうな人が雪男くんの兄ってだけでもありえないのに、さらにライバルだなんて…」

「でも、旧男子寮で二人で暮らしるって聞いてますし、雪男くんの好物とか知ってるなら強敵には間違いないですね…」

「そうだわ!この際、あのお兄さんと料理対決すればいいのよ!」

「料理…」

「対決…ですか?」

「男の胃袋を掴むのは基本!私達女子が、あんながさつそうな男の料理に負けるはずがないわ!きっと雪男くんもお兄さんじゃなく、私達を見てくれるに違いないんだから!」

「確かにそやわ!なら、行動は素早くやね!」

「雪男くんを振り向かせましょう…!」

決まれば即行動の女子高生三人は燐と雪男に向かって走って行く。あまりの驚きに、二人は少し離れて距離をとりつつ、女子高生の勢いに呑まれまいと後退った。

「あの…断ったはずだよね?」

「さっきのと別の話です!私達は雪男くんのお兄さんに、料理勝負をしてもらいたいんです!」

「雪男のお兄さんって…。俺には奥村燐って名前がなぁ…」

「奥村燐!勝負せんか!!」

「いきなりフルネームで呼び捨てかよ!」

「勝負してくれるんですか?どうなんですか?」

「…ったく…別に構わねぇけど…。」

「兄さん、断ってもいいんだよ?」

「お前のファンなんだろ?なら、希望には答えてやんねぇと」

「優しいね、兄さんは…」

ふっと微笑み、燐の頭を撫でる雪男を見て、女子高生たちは燐に怒りを覚える。

「ちょっと!まだ対決もしてへんのに雪男くんにアピールするのやめてくれやん!?」

「は?アピール…?」

「私達はまだ、雪男くんに頭さえ撫でてもらったことないのに…!」

「悔しいです!」

「なんだ…こいつら…」

「兄さん、なんかごめん…」

全く女子高生を理解できない二人はひきつった表情で三人を見るのだった。どんな料理対決になるのか思いもしないままに…。
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