青の祓魔師
□合宿での出来事
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それはいきなりの事。一体何があったのか、聞かされないままに突然来た。
「え、兄さん?」
「そうですよー。いやぁ、理由はともかく記憶まで戻してしまったのは不覚でした。貴方の名前ばかり言ってるんですから」
「雪男はどこだ!このピエロ!」
「そこにいるでしょう。とにかく、奥村先生、この子の面倒頼みますよ。明日の訓練はなしでも構いませんから」
「いや、あの…」
「あ、忘れていました。明日少し大事な会議があり、ウコバクが必要なので借りますね。では、アインス、ツヴァイ、ドライ☆」
嵐のように現れ、嵐のように消えたメフィストが置いていったのは子供の姿となった燐であった。
雪男は戸惑うままに燐を預かり受けるしかなかった。
「ピエロ消えやがった!雪男のとこ連れてってくれるんじゃなかったのかよ!」
当の本人は、未だに目の前にいる雪男を探していた。どことなくその様子は焦っているようにも思える。
「兄さん、どうしたの?」
自分より幼い存在に、兄と呼ぶことに違和感を覚えながら、雪男は焦っているように見える燐に言葉をかけると、燐は今雪男に気付いたとでもいうように目を見開いた。
「雪男…雪男なのか!?」
「そうだよ。兄さんよりもでかいけどね。」
記憶を戻したとメフィストから聞いていた雪男は、燐の言葉にあれは嘘なのかと勘ぐるが、すぐに事実とわかる。
「若先生やないの、もう食事できてますん?」
「あ、いや…」
「あれ?子供がいますやん…なんや、奥村くんに似てますね。まさか、奥村くんの隠し子!?」
「何言ってるんだ?俺は奥村燐だ!」
「! 兄さん、やっぱり記憶がないの?」
「雪男、何慌ててんだ?」
「え?え?どないなってんの?」
いきなり現れた志摩に、全く見知らない人といった素振りの燐に雪男は混乱する。しかし、これでは埒があかないと、雪男は志摩に頼んで事情を話すべく、候補生を食堂に集めるのだった。
「…というわけなんです。」
「魔性かなんかですかね?魔性で子供になるなんて聞いたこともないですけど」
「そういった発見はないので、可能性は低いかと」
事情を話せば、なんとなく理解しづらい中、勝呂だけは可能性を思い付くだけ話したが、どれも当てはまらないような話ばかりであった。
「あ!」
突然、しえみが声をあげ、候補生、燐、雪男としえみを見た。
「そういえば、燐は何で雪ちゃんが雪ちゃんだってわかったのかな?」
「なんとなくだ!」
「なんとなくって…奥村くんらしいけど…」
しえみの問いの答えに、志摩は呆れたように言うが、すぐに燐は自信満々の態度で言葉を放つ。
「大きくても小さくても雪男は雪男だからな!間違ったりしねぇよ!たった一人の弟なんだ!」
「兄さん…」
「兄弟愛って奴ですね。奥村くんと先生見てると、奥村くんは小さいけど、記憶がなくなったようには思えませんね。」
子猫丸は微笑ましく奥村兄弟を見守る。子猫丸の言葉に皆も納得したような表情を見せていた。
「先生、その子に関してもそうですが、夕飯に関してはどうされるんですか?」
「出雲ちゃん、そないにお腹空いてんの?」
「ち、違うわよ!料理長が戻ってくるまで空腹で訓練なんてできるわけがないでしょ!」
「訓練はないと言ったはずですが…」
「でも、勉強やトレーニングはします。神木の言うことも一利あるかと。」
「確かに自習時間も必要ですし、それを食事なしとはきついものがありますね」
真面目な神木、勝呂の言葉に、ウコバクがいない今、どうするべきかと雪男は頭を悩ませる。そんな中すぐに救世主は現れた。