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□父と父
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「お父さん、修業はしないんですか?」
「悟飯、お前が強くなる必要はない。過去で何を学んできたんだ。いつも言っているだろう…、悟飯は俺が守ると…。」
「でもセルは…」
「セルだと?あいつは孫が倒した。俺には関係ない。悟飯さえいればいい…」
「わわっピッコロさんっ///」
いきなりピッコロに抱き締められる悟飯。こうも積極的なピッコロに慣れない悟飯は顔を真っ赤にする。
その表情よりも、ピッコロは悟飯の言葉に反応した。
「悟飯…、この頃よくピッコロさんと言うな…。どうしたんだ、一体…」
「え?な、何のことですか?」
「誤魔化すな、悟飯。何でも話せといつも言っているだろう」
「……お父さん…」
悟飯は過去から帰ってきて、自分の父となっていたピッコロに言ってないことがある。
それは自分が強くあること。そして、ピッコロが育て、本来ここにいた悟飯が存在しないことだった。
それを聞いた時、ピッコロは自分をどうするのか悟飯は不安でたまらない。
今の悟飯のピッコロと過ごして来た記憶と、ピッコロが悟飯と過ごして来た記憶に食い違いがありすぎる。
そのため悟飯は話せずにいたのだ。そして、セルを悟空が倒したとピッコロから聞き、悟飯は信じれない気持ちでいる。
変わった現代では悟空が生きていて、ピッコロが自分の父で…正直最初こそ、まぁいっかと軽く流していたが、実際は悟飯についていけないことばかり。
悟飯が言いにくいことを察したのか、ピッコロは悟飯の頭を撫で始めた。少し驚く悟飯だが、いっぱいいっぱいになっていた悟飯にはよかった。
「悟飯…、お前が何を話そうと俺は悟飯を離す気はない。信じてくれ…」
「あ…、お父さん…っ」
「ゆっくりでいい。一つ一つ隠していることを話せ」
「僕…っ僕…っ!」
「ああ、悟飯がどうしたんだ」
「…強いんです…っ!ピッコロさんよりも…ずっと強いんですっ!それに、僕…本当のお父さんも知ってて、ピッコロさんが僕を誘拐したのもみんな知ってるんです…っ!」
包み隠さず話した悟飯は泣くことはなかったものの、苦し気な表情をしていた。
それを聞いたピッコロは目を見開いていたが、すぐに苦し気な表情を見せる悟飯に向けて微笑みかける。
「よく話してくれた。何故そんな表情をしているんだ?」
「だって…僕、ピッコロさんの知ってる悟飯じゃない…っ!僕は…っ」
「戻ってきてくれたのだろう?」
「え…?」
「俺は渦に飲み込まれた悟飯を離して後悔していた。後悔しながら修業を続け、孫から悟飯を奪い取ってきたんだ…。約束をしたからな…。」
「ピッコロさん…っ」
「大変だったぞ、毎日のように泣くからな。だが、不思議と嫌にはならなかった…。修業をしながら、悟飯を守りながら、ずっと育てて来たんだ。孫が取り戻しに何度も来る内に、悟飯がクリリンたちと仲良くなって焦りもしたが、必ず悟飯は俺の元へと帰ってきた…。お父さんと言いながらな…俺は嬉しかったぞ、もし帰りたいならそうすればいい。孫…いや、悟空ならいつでも悟飯の帰りを待っているだろう」
「…っ帰りません!ピッコロさんは僕のお父さんです!ピッコロさんをもう一人にさせたくない!」
「変わらないな…。俺が育てた悟飯も、過去に会った悟飯も変わらない。俺を救ってくれる」
「お父さん…。僕はピッコロさんがお父さんで嬉しいです。僕はお父さんに救われましたよ」
「悟飯…、愛してる」
「お父さん、僕も愛してます」
お互いがお互いを抱き締め合い孤独を癒す二人。
荒野に人はいない。
このまま二人の世界で静かに時が過ぎ去ると思われたが、一人の男が二人の前に現われるのだった。