コノ手ヲ、紅ニ染メテ。

□scene.1―少女 side.
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「……………最後くらいは、な。」









何の、とは言われずとも分かる。













剣術の極みとされる、望月流。



決して表舞台に出る事は無く、その姿を見た事があるのは、数える程の人数しかいない。






ただ、去る高貴な家柄に仕え、その矜持を胸に慎ましやかに暮らす、最強の武家。






それが望月家なのだ―――と、世間では、そう認識されていた。







ところが、近頃、その名が語られる事はこれまで以上に減った。




その事にすら、気付く者は少ないが……………









その理由を知る者は、望月家の人間だけ。








跡取りに、恵まれないのだ。







何とか子を成そうとしたのだが、生まれたのは皆、女子。







仕方なく、その長女が次代の跡取りとして育てられた。






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