短篇

□White & Orange = White & Black
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俺は高校三年生になって空座第一高校に転校した。
理由なんてなんて事無い、単なる親の都合。
せっかく頑張って受験勉強し、苦労して入った高校を離れ、編入試験を受けてまで別の高校に入らなくてはならないとは、我ながら自分の不運さには舌打ちをしたくなるものだ。
そして入学試験より難易度の高い編入試験に難とか受かり、俺は空座第一高校に通う事となった。

さて、意味も無い俺の過程をグダグダと語る前置きはここで終わりにしておこう。
そう、意味なんて無い。
こんな過程なんて何の意味も無いんだ。
確かに俺が空座第一高校に転校する理由となる事に関しては意味を持っているが、それでも俺が“アイツら”と出会うのに、そんなモンを理由にしたくないのだ。





White & Orange = White & Black





「長月裏瀬。親の都合によりこっちに引っ越して来る事になりました。趣味は読書で…」

自己紹介と同時進行で、黒板に担任が大々的に俺の名前を書いていく。
俺はそのチョークが黒板に当たる音に耳を傾かせ、これから馴染んでいかなくてはならないクラスを眺めた。
ぱっとしない、普通のクラスだなっと思っていると、教室の窓際後ろの席に異質を見つけた。
どうして今まで気付かなかったのかを自分に問いただしたくなるような、兎に角今頃になって意識したのはその二人組。
一番後ろは眩しいくらいに明るいオレンジの髪をした男で、その一つ前のは、そのまま色を白に反転したような、兎に角白い男。
チラリと教卓の上にある生徒の席を記してある紙を見れば、二つとも『黒崎』とあった。
と云う事は双子なんだろうが、普通兄弟はクラスが別になるものなんじゃないか?

「じゃあ長月、席はここ」
「あ、はい…」

担任に『ここ』と指された席は一番後ろの窓際から二列目。
つまりオレンジの髪をした男の隣だ。

全身に視線を感じながら鞄が邪魔な細い道を通り、軽いステップで机に辿り着いた。
横に鞄をかけて、連絡事項を話す担任の声を聞き流し、何の気なしに隣へ視線だけずらす。
するとどうだろう。

「!」

白い男と目線がバッチリ合ったのだ。
男はニコリと笑って見せ、後ろのオレンジに何かを話しかける。
少し何を話しているかが気になったが、その声を覆い隠すようにチャイムが鳴り響いたため、何も分からなかった。





『どうや裏瀬?そっちにはもう慣れたか?』
「バーカ。そんな早く慣れれるわけ無いだろ」

転校生と言うだけでわらわらと集まってくるクラスメイトを対応しているだけで、あっという間に午前は終了。
俺は一人、弁当と携帯を持って屋上入り口前の階段に座り込んでいた。
流石にこの季節で屋上での食事は辛いため、外へ出るのは諦め、無駄に絡んでくるクラスメイトから逃げるようにここを選んだ。

『何やつまらへんな。転校早々クラスメイトの一人とトラブって忙しい学校生活が始まるー…とか、あらへんのか?』
「無い無い。てか漫画の読み過ぎだろそれ?確かに面白い二人組は見付けたけど…別にこれと言って関わる要素なんて無いし」
『アホ!そこは自分から行くもんやろ!』
「何それ?図々しい…」

前の高校の近くにあったバイト先の店長、平子真子と携帯越しに話しながら、一つ弁当に入っていたシュウマイを口に入れる。
平子とは向こうで年が離れているが、異様に仲が良くなれた男だ。
母校はここ空座第一高校で、今日から先輩後輩の関係も追加された。

『ほんま…初対面な奴等には冷たい奴やなー』
「冷たくて結構…だ………?」
『……………?どうした?』
「し、ちょっと黙れ」






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