短篇

□見つけたは海に浮かぶ星
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藍染に命令されて嫌々来た現世。
単独行動に出たグリムジョーを連れ戻すように言われたが、別に自由にさせときゃ良いかと思うんだけどね。
藍染様お気に入り、黒崎一護にちょっかい出されるのがそんなに気に入らないんだろうか?
泳がせときゃ良いと思うんだけど…。
確かにウルキオラの報告から見た黒崎一護は随分魅力的だったが、自分から動く程の興味は湧かなかった。

「…と、あっちか」

霊子で足場をつくり後ろを振り向く。
グリムジョーの霊圧が跳ね上がったのだ。

「……?」

そこでふと違和感を感じた。
グリムジョーと相対していると思われる死神、こいつが黒崎一護だとは予想できる。
だがその霊圧に俺達と同じ、虚のものを感じるのだ。
ウルキオラからの報告はアーロニーロの認識同期と違い自身の見たもの、感じた事しか知る事が出来ない。
相手の霊力などは知り得ないのだ。

「……来て…良かったかな…」

フツフツと無い心から沸き上がる好奇心に従うかのように、俺は足を動かした。





見つけたは海に浮かぶ星





「ダメだよグリムジョー。それ以上は藍染も許してくれない」
「……っ!!?…裏瀬…!!」
「!?」

刀を抜こうとしたグリムジョーの手首を掴み、数センチ刃が抜けた状態で止めさせる。
俺が現場――こう言うと刑事ドラマみたいだよね――に着いた頃には道路が破損し、大きく円状にヒビ割れていた。
現世の警察とか色々大変だろうな。
俺と全く関係無いけど同情するぜ☆

「東仙がかなりご立腹だから、早く帰るよ…」
「うるせえ!!てめえはすっ込んでろ!!」

俺の腕を払い除け、グリムジョーが噛み付くような勢いで吠えてきた。
それに俺はため息を長々と吐き、グリムジョーの左肩を脱臼させる。

「がっ!!?」

どうやって外したかは無駄に一回転して踵落とししただけ。
真っ直ぐ直線に黒崎一護の前まで落下したグリムジョーに鼻で笑ってやり、トンっと俺も地上に降りた。

「ゴメンね黒崎一護。ウチの6番が迷惑かけちゃって。すぐ連れ帰るから」
「……何で…俺の名前…」

困惑しながら左目を押さえる黒崎一護に、何故虚の気配を感じるのかを理解した。
この子供の中に虚が住み着いている。
それは黒崎一護の裏の面と言うわけでなく、黒崎一護の無意識に押さえている本能が形となったものなのだろう。
しかもグリムジョーと黒崎一護の姿を見て苦戦していたのは一護の方。
内に住まう虚の出て来ようとするタイミングがまるで一護を殺されないようにするかのようだ。

「…大切にされてるね…」
「………は…?」
「んーん、何でもない。じゃあね一護。……ほらグリムジョーも!何時まで踞ってんだよ!?ほら帰んぞ!!あんたの従属官全員殺られちゃったんだからもう良いでしょ?」
「…ぐっ!?」

起き上がらせるついでにグリムジョーの左肩を両手で掴み肩を入れてやる。
随分痛がったが、まあバカだけどグリムジョーも6番なんだから大丈夫だろ。
黒腔を開き、一足先に俺は潜った。
足場の無い黒腔は自分で足場を造んないといけないから個人的に面倒臭いんだよね。
だから余り現世に来たいとは思わない要因の一つでもある。

「…ま…待て!どこ行くんだよ!!」

グリムジョーも潜ろうとした時、一護が叫んだ。
押さえていた手を下げ、黒く染まった目がさらに俺の好奇心を刺激する。
だが俺が口を開こうとした時にグリムジョーは一護に一瞥し、先に言われてしまった。

「ウルセーな。帰んだよ。虚圈へな」
「ふざけんな!勝手に攻めて来といて勝手に帰るだ!?冗談じゃねえぞ!!下りてこいよ!!まだ勝負はついてねえだろ!!!」

え?
まさかこのままバトル続行?
それこそ冗談じゃねえぞ。

「…まだ勝負は…ついてねえだと…?ふざけんな。勝負がつかなくて命拾いしたのは、てめえの方だぜ死神。さっきの技はテメーの体にもダメージを与えるってことは、今のてめえを見りゃわかる。撃ててあと2・3発ってとこだろう。だが仮にあの技をてめえが無限に撃ち続けられたとしても…てめえに、解放状態の俺は倒せねえ」
「…解放……状態だと…?」
「…俺の名を忘れんじゃねえぞ。そして二度と聞かねえことを祈れ。グリムジョー・ジャガージャック。この名を次に聞く時が、てめえの最後だ。死神」

バトル続行はなく、決め台詞だと言うかのようにそう宣言したグリムジョーの目の前で黒腔が閉じる。





◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇





「………おい裏瀬…」
「何グリムジョー?」

藍染のいる場所まで白黒の廊下を歩いていると、後ろから左肩を擦るグリムジョーが話し掛けてきた。
それに振り返らず返事をし、少し足並みを速める。

「面倒事の嫌いなてめえが…何だって現世に出て来やがった…?」
「……藍染に命令されて…」
「バカ野郎。てめえが藍染なんかの命令で動くか」
「うーん…」

確かに、いつもの俺なら藍染に命令されようと面倒臭がってグリムジョーを迎えに行かないだろう。
そんな事するならスタークの所に行って寝てる。

「さーて?何でだろうね?」
「あ゙ぁ?!てめえ、ふざけてんのか?」
「なんとなくって事にしておいてよ」
「…裏瀬…お前…」

何か意味ありげな、そんな事を言おうとしたグリムジョーの言葉の続きは聞けなかった。
ちょうど目的地に到着して

「―――――おかえりグリムジョー、裏瀬」

と言う、上から目線(物理的含む)の藍染の声が掛けられたからだ。












「え?何グリムジョー?腕斬られたの?ダッセー!!」
「笑うんじゃねえ!!」
「しかも十刃落ち!十刃落ち!!あーはっはっはっはっ!!」
「指さして笑うんじゃねえ!!」
「東仙も『大義の下の殺戮は、正義だ』って!!あー!腹痛い!!あはははははははははは!!こいつバカー!マジこいつバカ!!」
「だから笑うな!!」






>あとがき






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