短篇

□貴方に愛と友情を
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俺は空座第一高校に通う長月裏瀬だ。

さてと、自己紹介なんてこんなんで良いか。
俺はお前で、お前は俺なのだから。




貴方に愛と友情を




「オース一護」
「オース裏瀬。何だよ、今日は随分遅かったな。何かあったのか?」
「購買が混んでてさ〜、揚げパン買えなかった〜」
「そりゃ災難だったな」

屋上で一人先に弁当を広げる一護に戦利品のおにぎりと緑茶、唐揚げパンを持って近付いて行く裏瀬。
彼は一護の幼馴染みだ。付き合いは同じく一護の幼馴染みであるたつきと同じで空手の道場に一護が通い始めてから。今では親友である。
裏瀬も一護が空手を止めた1ヶ月後に止め、高校でも何処の部活に参加することなく過ごしている。

「なあなあ?明日の文化祭で俺らのクラスコスプレ喫茶するじゃねえか?」
「…ああ…、お前が無理矢理俺を接客にしたやつな…」
「…まだ根に持つか…」
「あたりめーだ」

グラウンドには部活に勤しむ人は少なく、大半の者が校内で明日の文化祭の準備をしている。裏瀬達は運悪くクラスの実行委員を言い渡されたため、普通なら一般生徒と同じで帰るところなのだがそれも出来ず、こうして昼休みに休憩がてら昼食を取っているのだ。

一護と裏瀬が互いの飲み物を飲みながら睨み合っていると、ガチャリと金属音が響き啓吾と水色、チャドが姿を現した。

「おー一護!裏瀬!お前らはえーな!」
「違うよケイゴ。僕らが遅いんだよ」
「ム…遅れた…」

そう言いながら3人は腰を下ろす。
それぞれが思い思いに座った筈なのだが、自然とそれは円となり、一護から裏瀬と水色が隣り合う姿が見える。
それに何だが複雑そうな顔をするが、一体何が不満なのか自分でも理解出来ないため妹の遊子お手製弁当を口に運んだ。

「で、何の話してたの?」

水色が戦利品の焼そばパンの袋を音を立てながら開け、話題を振る。
裏瀬は一度ニヤリと一護に笑って見せると、すぐに水色に耳打ちにした。
何事かと見守る中でどんどん水色の口は弧を描いていき、終いには吹き出してしまった。
もう何が何だか分からない3人は、互いに見合い首を傾ける。
ニヤニヤとそんな3人を眺めて水色に自分が先程飲んだお茶を与える。
それを受け取り、一口飲んだ水色は一護に悪戯顔でこう告げた。

「一護が文化祭で女装するんだってね」
「は!?」
「え?マジで?」
「ム!本当か一護?」
「しねえよ!嘘に決まって「ジャンケンぽん」
「は?え?」

驚きを顔に表せながら聞いてきた啓吾とチャドに一護は赤面しながら否定するが、その声を遮るように裏瀬にジャンケンを挑まれ、反射的に言葉を切ってチョキを出した。

「!」
「やり〜。一護罰ゲームで明日女装な?」

裏瀬はグーを出していたため一護の負け。そして良い建前が出来たとばかりに明日のコスプレのリクエストを押し付けた。

「待てよ裏瀬!そんなこと言われたって衣装はもう在るんだ。今さら変えようがねえだろうが!」
「ふっふーん!残念でしたな一護。俺が何の係だったか覚えているか?」
「は?たしかお前は裏方で経費削減のために必要なものを誰かに頼みに行くお頼み係………っ!!」

得意気に訊いてきた裏瀬に一護は面倒臭そうに答えたが、その言葉を積むぐうちにあることに気付きハッといつの間にか仁王立ちする彼を見る。

「ま・まさか…」
「そう!まさにそのまさかさ!俺達のクラスには伝説の手芸部部員、石田雨竜に井上織姫が居るんだぜ?そんな衣装など、とうに用意されているぜ!!」
「何でそんなことすんだよ!?」
「一護の女装を見てえからに決まってんだろ!!」
「小もねえ!!!」

ああ…と脱力して一護は頭を抱える。
今から打ち合わせのため教室に戻れば、必ず手芸部sに捕まり、試着することになるだろう。
石田の事だ、絶対にフリルが溢れている。

「なんて事すんだよ…。楽しいはずの文化祭がまるで地獄じゃねえか…」
「え?そんなこと無いぜ?」
「…………じゃあその足を退けろ」

最終的に四つん這いになって床に手をつく一護に裏瀬は心外だとばかりに踏んづけた。
それを鬱陶しそうに払いながら一護は立ち上がって、自分より少し小さい裏瀬を見下ろす。

「女装と言っても衣装は戯言シリーズネコソギラジカル上の251ページで相変わらず美人な哀川潤の服だから」
「最悪だな!!」

一護の鋭い眼光など気にせず裏瀬はサラリと噛まずに言ってのけた。
一護はそれに再度床に手を付ける事となった





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