もふもふレンジャー

□黒いライオンと妹*中編
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公園での一件をキヅキに報告したユリアは、しばらくの間 一人での外出許可が降りずに苦労した。

警戒心を持て、だの何だのと小言を言われてしまったが、珍しく顔色を変えた兄を思い出して彼女は困ったような笑顔を溢す。
まるで父親のようだ、と。


けれど二週間が経過した頃には束縛も緩和され、買い物にも出られるようになった。
警戒心は、忘れずに きちんと持っているつもりだ。


友人のマンションに遊びに来ていたユリアは、時計の短針が五時を指したのを見て帰り支度を済ませ、部屋を後にした。

電車で本部までは一時間くらいだ。
夕食前には着けるだろう。


下まで見送るという友人の申し出を丁重に断り、エレベーター前で彼女と別れたユリアは上に表示される階数を見つめた。

友人の部屋は八階だ。


この小さな箱のようなエレベータは、少し不安を煽るようなものだった。

質素で、音が大きくて、壁紙が剥がれたり欠けていて……かなりの年代物だ。

止まってしまうのでは、とユリアは少し心配したものの、八階からとなると階段では辛い。
運動靴ならともかく、今日はヒールなのだ。


ガコン、と まるで落ちてしまいそうな音を立ててエレベータが途中で停止した。

七階にランプが点灯している。

扉が開くと同時に乗り込んできた男性は、操作パネルの前に居るユリアの左後ろに立った。

相手を確認する為にも、と彼女が軽く振り返り男性に尋ねる。

「何階ですか?」
「……い、一階」

目深に被った帽子、それに俯いている為に顔は分からないが、問いに答えた声は酷く焦っているように聞こえた。

そういえば、入ってきた時も やけに早い動きで奥に行ったように思う。

荒い呼吸をしている彼に不信感を抱き、ユリアは次の階で降りようと六階のボタンを押した。

あまり警戒心の強い方ではない彼女が怪しいと感じるのだから、大事をとった方が良い。


*
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