けもの日記
□猫の場合
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二人掛けのソファに並んで座り、お気に入りのファンタジー映画を観る。
恋人同士なら、極々 普通の ありふれたデートだ。
何度も繰り返し観た映画が終わり、スタッフロールが流れ始めると、ミルが伸びをする猫月をみあげた。
「猫月くん、何飲む? ジュースと牛乳と、コーヒーとか お茶もあるよ」
一つ欠伸をしてから、彼が低いテンションのまま答える。
「……君と同じものにする」
「分かった。じゃあ、ココアにしよう」
「それ、さっき選択肢になかったよね」
相変わらずのマイペースなミル を眺めながら、猫月が呆れたように息を吐いた。
もちろん本当に呆れている訳ではなく、むしろ彼女の そんな所は好意的に思っている。
鋭いツッコミに動じた様子もなく勢い良く立ち上がったミル が、ご機嫌でキッチンに向かおうとした。
その手首を掴み、猫月が彼女を引き止めて席を立つ。
「僕も手伝う」
「ううん、大丈夫。猫月くんは座ってて良いよ」
「……そう」
小さく頷き、彼が再びソファに腰を下ろすのを見届けて、ミルが部屋を出て行く。
彼女に尻尾があったなら、勢い良く振っている姿が容易に想像できる。
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