けもの日記

□服選び
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もしかしたら、愛想を尽かされたかもしれない。
いつの間にか、犬川の存在は彼女の中で大きくなっていたのだ。

振り向いた先で、背中を向けた彼が しゃがみ込んでいる。

「……犬川君、何してるの」

前に回り込み、顔を覗くと、手で覆っていた。

犬川は彼女に気付いて直ぐに手を退け、困ったように笑った。

「ごめんね。可愛くて、ついミルちゃんを抱き締めたくなっちゃったから。耐えてた」

脱力してしまうような安心する笑顔に、ミルは小さく息を吐き出し、彼の髪を ぐしゃっと撫でた。

突然の事に、状況が飲み込めずにいる犬川の手から買い物カゴを取り、しれっとした顔でミルがレジに向かう。

「精算してくる」
「あ、一緒に……」
「大丈夫。外に居てね」

すたすたと去っていくミルの背を見送り、犬川は店の外で飼い主の買い物を待つ柴犬と並んで、彼女を待っていた。

次に二人が会う予定の日、猫のような彼女は いつものように素っ気ない態度でスカートを着て待ち合わせ場所に現れたらしい。



*fin*





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2013.10.11

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