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□月光浴
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今夜は月がとても綺麗だ。
こんな夜は心がどうしても不安定になる。
月を見ていると孤独を感じてしまう。
無性に誰かに会いたくなって涙があふれてくる。
そして、自分というものの存在意義を考えてしまう。
俺は心の中でこう繰り返す。
-誰か俺を必要としてくれる人はいませんか-
-俺を愛してくれる人はいませんか-
返事は返ってこない。
いつもそうだ。
そして俺は独りぼっちだと思い知らされる。
俺は今日も問いかける。
いつものように、返事はかえってこない...、
はずだった。
「安田。」
驚いて振り向くと、
「大...泉、...なして、」
「なしてって...、お前に会いに来たんだべ。駄目か?」
混乱して何も言えないままの俺に大泉が近づいてくる。
そして...
ぎゅっと、抱きしめられた。
そのまま、随分と長い時間が過ぎたように感じた。
実際はほんの数秒だったのかもしれないけれど。
「ねぇ...、大泉」
「なした?」
「大泉は、俺のことを必要としてくれる...?」
気付けば、俺はそう聞いていた。
いつもその答えは絶望にしかならなかった。
でも大泉の返事は、その“いつも”ではなかった。
「当たり前だ、俺には安田が必要だよ。」
また涙があふれてきた。
でもそれはいつものとは違う。
自分の存在を認めてくれたことへの、感謝の涙。
「...、お前また泣いてんのか?」
「...うるさい」
「ホント泣き虫だべ、安田は」
そう言って大泉は俺の頭をくしゃりと撫でた。
そしてさっきよりも強く強く抱きしめられた。
俺が求めていた答えは、とても近くにあった。
俺は幸せなあたたかさを感じ、意識を手放した。