*猫視点
*ガイサメ



ついさっき、心優しい人間に拾われ、餌を貰い、今は膝の上に乗り、頭を撫で撫でしてもらっている。
優しく頭を撫でられるのは、心地が良い。
つい、うとうとすると、何処からか殺気を感じた。

殺気がする方に、視線を向ければ、一人の男が我輩を睨んでいた。

恨めしそうに、ジっと見て来る男に我輩は、察した、嫉妬しているのだろう、と。
我輩に嫉妬するなど、馬鹿げているが、それだけ、今、我輩の頭を撫でている、人間の事を好いているのだろう。
そんな事を考えていたら、我輩を睨んでいた男が立ち上がり、こちらに近づいて来た。


「鬼鮫」

「ん? なんですかガイさん?」


そうか我輩の頭を撫でている人間は鬼鮫、と言うのか。
それでこの男はガイ、か。


「いつまでそいつと遊んでいるんだ?」

「え?」

「そろそろ飯の支度をした方がいいぞ」

「何言ってるんです? 先程食べたばかりじゃないですか」


そう言いながら鬼鮫は笑った。

鬼鮫は気づいていないようだ、ガイが嫉妬している事に。


「しかしだな」

「いいじゃないですか、可愛いんだから」


鬼鮫の言葉に、ガイはムッとしていた。

そのガイの表情を見て、鬼鮫は漸くガイが嫉妬している事に気づいたらしく、我輩をそっとソファーの上に置き立ち上がる。
ガイの前に立ち、クスクス笑い鬼鮫は、ガイの頭を撫でた。


「嫉妬したんですか? 可愛いですね」

「な、可愛いくないぞ! 鬼鮫の方が可愛い」

「ふふ、よしよし」


顔を真っ赤にするガイの頭を、鬼鮫が撫でる。
すると、ガイは更に顔を真っ赤にした。

この二人は、見ていて楽しい。
しかし、ここに居てはいけない、この二人の邪魔はしてはいけない、と思い我輩は腰をあげた。
ソファーから降り、開いている窓に立つ。
最後に感謝の気持ちを込め、一鳴きしてから外に出た。


我輩は猫である。
あの二人が幸せになる事を祈りながら、我輩は歩き出す。









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