短編

□片想い
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俺があいつのセフレになって丁度1年が経つ。
あいつはいつまでも俺に振り向いたりしない。
いっそのこと届けてしまおうか。
この苦すぎる、片想いの味を。


あいつからの呼び出しのメール。
もう何度見ただろう。
今日来いよ、 そんな寂しい文面を。
きっと本命の子にはもっともっと甘いメールをするんだろう。
考えていたらいつの間にかあいつの家の前にいた。
チャイムを鳴らすとドアも開けずに開いてる、 とだけ返ってきた。
勝手に開けて中に入ると、急に抱き締められた。
「悠…。遅かったな。」
「そうか?ていうかどうしたんだよ、」
「待ってた、から。」
「うん。わかった、から。離して。」
「え…あ、うん。」

本当は離してほしくないけど、なんて。
(言える訳ない。)

「どうしたの、怜。なんかあった?」
「あ、うん。今日さ」
俺と悠の出会った記念。
なんて言いながら、ポケットから小さな箱を取り出して俺に手渡す。
「何?」
「チョコ。お前好きだろ。」
「言ったっけ。」
そんなこと。
覚えてるなんて反則だろ。
「まあ、ありがと。」
「ああ。」
男らしい顔をくしゃっと歪めて笑うお前が大好きだ。
でも、そんな笑顔を向けられると期待してしまう自分がいる。
嬉しいけど、悲しい。
この笑顔を見続けていたい。


お互いに求めあった後、
帰り道でチョコの存在を思い出した。
ポケットから出して包みを広げて箱を開ける。
中には高そうな四角いチョコが4つ入っていた。
口に含むと、ビターなのだろう、苦い味がした。

片想いの、苦い味。
                       

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