NOVELT

□大空に
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何よりも大きくて広い。

青い、蒼い綺麗な空。

実際この目で見たことはないけれど一度でもいい・・・

「外」に出て空の下に立ってみたい。


「だからっ!!てめぇはそんな事言うなって何回言えばわかんだよ!!」

「3986回くらい?」

怒りのあまり今にも咆哮(ほうこう)しそうな暁也と暁也の怒りを煽る笑みを携えて、微妙な数を繰り出しす知迅。

そしてそれをオロオロとリブングのソファで見ている響は収集がつかなくなったこの状況に困りきっていた。

「大体さぁ、さっきから暁『そんな事言うな』って言ってるけど『そんな事』ってどんな事?」

響はその時知迅の頭に悪魔の角が生えている光景を想像した。

きっと実際にそうだろう。

「どんな事って・・・そんな事言えるかぁぁぁ!!」

さっきよりも確実に暁也の怒りがレベルアップしたのは間違いないだろう・・・。

響もさすがにこのままでは、暁也が家を破壊しかねないと思い止めに入ろうとした時玄関のドアが開いた。

「ただいま。」

帰ってきたのは寛。バスケ部の荷物やら学校の荷物やらで大荷物だ。

暁也の怒号に全く驚かず、ちらりと二人を見るだけで
平然としている。

「気にしなくて大丈夫だから。いつもの事だし。」

「う・・・ん。??」

寛の声の後に何か音がした。響の不思議そうな顔を見て寛が「ああ」と言ってタオルに包まれた『何か」』を出した。

「帰りに見つけたんだ。弱ってるみたいだから連れて来た。」

タオルに包まれているのはツバメのヒナだった。空腹なのか小さく鳴いている。

「生き物・・・?」

盲目の響は寛が何を持っているのかわからない。小さな鳴き声を聞いてやっと「生き物」であることを知る。

「ツバメのヒナじゃん。きっと巣から落ちたんだろうな。」

「知迅さん?」

さっきまで暁也と争っていた(実際は暁也の一方的喧嘩だったが。)知迅がいつの間にか何気ない顔で現れた。

「おー。響心配させたな。愛の戦士知迅、無事帰還しました。」

わしゃわしゃと知迅はいつもの様にタバコを咥えながら響の頭を掻き回す。髪がぐしゃぐしゃになってしまうけど、響はそれが大好きだ。

「それにしても最近の寛君は変わったねー。お兄ちゃん嬉しい☆」

「・・・なにが?」

タバコを咥えなおして寛に笑いかけるが、言われた本人の寛には何のことだかさっぱりだ。

そんな寛を見ると穏やかな笑顔で寛の頭もわしゃわしゃと掻き回した。

知迅は寛からヒナを受け取り、響の前に差し出す。

「響、少し触ってみろよ。ほら。」

「え・・・?いいよっ!やっ・・・!怖いっ!」

知迅に手を取られてヒナに触れようと努力したが生ま
れた時から盲目である響にとって見たことないツバメのヒナは「未知のもの」であるのと同時に「恐怖」でもあった。

「怖くねぇって。」

自分から手を差し出せない響を安心させるように知迅が優しい声を出した直後。

「・・・っ」

響の手にふわふわとした「何か」が触れた。

「な?」

「温かい・・・。ふわふわしてる・・・。」

さっきまであった恐怖心がすっかり消え去った。

「だぁろ?暁のような肌触り☆なめらかな・・・」

「知ー迅ーっ!!」

いつの間にか知迅の発言を聞きつけた暁也が現れた。

「わりぃわりぃ。暁の肌のほうが気持ちいいって。」

「・・・・!!だかっらっ!!お前はぁぁぁ!!」

家はきっと崩壊するにちがいない。と思ったのは響だけではなかった。
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