NOVELT

□NAME・U
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「はぁぁ〜・・・・」

今、最近の生活の中で一番憂鬱なときかも。

何事も楽観思考な俺をこんな気持ちにさせるなんてやっぱり暁さんは曲者。

「冷めないうちに持っていってあげてね。」

「へーへー」

この半年間暁さんと一言も話してないこの俺に昼飯を持ってけというのか。

俺は義兄を「暁さん」と呼ぶ・・・ことに決めている。
呼んだことないけど。少しでも親密になれる事を夢みてね。

スーパー度級な鈍感なのか、仲良くなるように気を回
しているのか・・・。

母さんも曲者・・・。

一応、暁さんと俺は隣の部屋だったりする。隣なのにコミュニケーションゼロってある意味すごいと思う。

憂鬱なオーラにまみれながらも暁さんの部屋のドアをノックする。

「あの〜・・・昼飯もってきたんすけど」

未だに敬語ってとこが虚しい。

・・・返事ないし。

「あの〜・・・」

言いかけた途端、部屋の主が乱暴にドアを開けた。

「いらねぇ。」

超不機嫌。MAXって感じ。

「腹すかないんすか?」


「誰が飯くわねぇって言ったんだよ。俺はそれを食わ
ないって言ったんだよ。」

『それ』とは母さんが作った昼飯。

「あの女が作ったもん食えるわけねぇだろ。それ食う
んだったら生ごみの方がよっぽどましだわ。俺はコン
ビニ行く。・・・退けよ。」
暁さんは俺を突き飛ばして去ろうとする。
プツン・・・。

何かが俺の中で切れた。
俺は無意識に暁さんを壁に押し付け、胸倉をつかんでいた。

「いい加減にしろよ!まだ再婚のこと引きずってんのか!あんたの親父も俺の母親も一人の男と女なんだよ!恋だってするだろ!それを未だに受け入れる事が出来ないなんて子供かよっ!!」

「っ・・・!!・・おまえなんかになにが分かる!?」

「分かるか!!そんなのよりもあんたの親父の事分かれよ!あんたがそんな態度だからいつも無理してまで時間作って早く慣れるようにって頑張ってんだぞ!・・・せめて父親の前では俺と仲いい兄弟を演じろよっ!!」

石野さんのためとか言って本当は俺の願望なのかもしれない。

暁さんと仲いい兄弟になる事が・・。

「俺はお前を弟だなんて思わない!一生!!」

一瞬、周りの音が何もしなくなったような気がした。

暁さんの走り去る足音ではっと我にかえった。

暁さんに言われた一言が頭の中で反芻する。

「・・・ダメージ100だわ・・。」

一瞬消えたと思ったセミの声が今度はいつもより五月蝿く聞こえた。
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