NOVELT

□NAME・T
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太陽の光に照らされて黒色の髪が茶色に透けて見えるのがとても綺麗だ。
その髪の持ち主は窓から外を眺めている。気づかれないように背後に回ってみる。

「お〜とっ!」

「・・・っ!」

響の身体がびくっと反応し、後退した。まるで怖がるように、何かに怯えている。

ここに住むようになってから表情も少しずつ柔らかくなってきたけどこの反応だけは変わらない。

此処には響を怯えさせるものなんてないのに。

響がいた研究所で悪い扱いを受けていた事は身体に残っている傷で分かる。
怖い思いをしてきた事だって知っている。

けど・・・・・。
少し悲しい。

響はまだ自分達を信用してくれていないってことだから。
響に信用されてない自分が嫌になってくる。

だから少し響に八つ当たりをしてしまう。

「響・・・?」

「ごめっ・・・ごめんなさい!」

「何で謝るの?そんなことで響をキライになんてならないよ。・・・・俺のことまだ信用できない?」

俺ってかなり嫌なやつだ。

「違っ・・・、奏汰君っ」

響は少し涙目になりながら必死に否定している。

「ごめん。少し八つ当たりした。俺が驚かしたんだから俺が悪い。」

「え・・・・?ううん、奏汰君は悪くない。」

響は必死に首を横に振る。その仕草は小動物を思い浮かべさせる。

「ぷっ・・・可愛いな、やっぱ響は」

知迅や寛までもべた惚れなのも頷ける。うん。

「??」

「お前ら〜!朝飯できたぞ!休みだからって遅くまで寝てるなよ!」

一階から暁さんの声がする。毎日の食事担当の暁さんは口が悪いがちゃんと世話を焼いてくれる。

前の暁さんでは考えられなかったことだ。

どうして前の暁さんを知っているか・・・・
それは・・。

俺の義兄だから。
義兄っていっても最初は名前すら呼んで貰えなかった仲だった。

「奏汰〜っ!響を一人で降ろさせるなよ!」

「はいはーい!また落ちられると困るしな」

ちらっと響を見ると恥ずかしそうに俯いていた。

「また」というのはつい昨日のこと。一人で階段を下りた響が踏み外して転がり落ちたのだ。
その後はみんなで焦って騒いで大変だった。

「さ、行くぞ」

「もう転ばないよ!」

響はまだ恥ずかしそうに、言った。
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