NOVELT
□廻り逢い
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逃げなきゃ・・・!
もう「あの場所」へは戻りたくない・・・。
走りたいという思考とは反対に弱りきった身体はもう言う事を聞かなくなっていた。
西暦21××年。科学技術は発達し、数年までは叶わなかったことを今では科学の力で駆使する事が出来る様になっていた。
近年では人間の姿を保ち、主人に忠実に仕えるアンドロイドが公的に製造・市販されている。
アンドロイドはとても高価であるため、需要はさほど高くなく、重宝されている。
そしてアンドロイドよりも遥かに重宝されているもの・・・・・オッド・アイがある。
突然変異遺伝子で現れるオッド・アイの持ち主はこれからのバイオテクノロジーの発展のため「資料提供」と称して、大都市の中心に位置する施設で一生を送ることになる。決して外に出る事が許されないため「監禁」という人も少なくない。
「じゃ、暁(とき)さんに遅くなるって言っといてなー!」
夏の日差しを受けて茶色い毛が金色に光る少年・・奏汰(かなた)を見送って家への道を行こうとした寛(おき)は路地裏にふと目をやった。いつもは全く気にならない場所だが今日は何故かとても気になる。
すると、何かが小さく動いた。猫だろう・・・と思っていたがその正体を見て寛はとても驚く事になる。
奏汰が帰る頃はもう暗くなっていた。腹減ったぁ・・・と家のドアを開けるなり暁也(ときや)の声が夏の夜にこだまする。
「奏汰ーっ!!おっまえ遅くなんならそう言えって何回もいってるだろうがっ!」
「は・・・?寛に言ったけど・・・。寛は?」
「寛ぃ?!あいつもいないんだよ!まったく飯作るの俺なんだからな!」
寛の奴・・・恨むっ・・!!
暁也が睨むその後ろでは階段をタンタンと下りてくる金髪の少女顔負けな顔立ちである少年・・那岐沙(なぎさ)。
「まぁた怒られてんの?懲りないねー奏汰も。」
「だーかーらっ!今日は俺悪くないって!」
「でも寛が遅くなるなんてめっずらしいよなぁ」
煙草をふかしながらやってきたのはこの家の家主知迅(ちはや)である。
筋肉をつけ日焼けした体にタンクトップを着てどんな時も煙草をふかしているヘビースモカーである。
「確かに・・・。連絡は入れる奴だったし。」
暁也が「お前と違ってな」と言う言葉を無視し奏汰が呟くと知迅がニヤっと笑う。
「奴もとうとう大人の仲間いりってやつか。ククっ。ウケル。」
「知迅下品〜!」
「ハハッ。那岐沙だけには言われたくないわー」
知迅と那岐沙の間でバチバチと火花が上がり始める。
「なにさっ!僕が知迅みたいに口を開けば下ネタしかでてこない奴だっていいたいの?!」
「誰がっ口を開けば下ネタばっかりだ!!おっまえはいちいち小言ばっかだな!暁よりタチわりぃぞ!まだ何に関しても徹して無関心な寛の方がまし・・・・・」
知迅が言い終わらないうちに玄関のドアがガチャリと鳴った。
「・・・皆して玄関なんかで何やってるの?」
帰ってきたのはもちろん寛である。
「お・・・寛おおかえり・・・。」
「ざまぁって感じだな。那岐沙」
暁也が那岐沙のほくそえんでいる顔を見て言った。
「アレ・・・?寛、何抱えてんの?」
奏汰は寛が肩になにかを抱えているのを見た。寛は抱えていた「もの」を静かに前に抱えなおす。それに全員の注目が集まる。
その「もの」は、漆黒の髪とは正反対に真っ白な肌をした・・・・少年だった。
「え・・・・?どしたの?」
「拾った。」
奏汰の質問にさらりと答えると寛は少年を抱き、つかつかと寝室に歩いていってしまった。
「ちょっ・・・!まっ・・!寛!」