夢を乗せた船旅
□第三章
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海軍基地がある島から船を貰い大海原を航海し始めたルフィ達は――…
三航海【海賊嫌いの海賊泥棒】
「あーー腹へったーーー」
海の真ん中で大きな叫び声を上げる者が一人、この海を漂っている海賊のキャプテンであるルフィだ。そして、新たな仲間に加えた剣士であるゾロは眠っていた身体を起こし、呆れた様子で文句を言う。
「だいたいお前が航海術持ってねェってのはおかしいんじゃねェか?」
「おかしくねェよ。漂流してたんだもん俺は!お前こそ海をさすらう賞金稼ぎじゃなかったのかよ」
「俺はそもそも賞金稼ぎだと名乗った覚えはねェ。ある男を探しにとりあえず海へ出たら自分の村へも帰れなくなっちまったんだ。仕方ねェからその辺の海賊船を狙って生活費を稼いでた…それだけだ」
「何だお前、迷子か」
「その言い方はよせ!!」
海賊に出たのなら航海術さえ持たないなんておかしいとゾロが言えば、ルフィも負けじと言い返す。それにゾロは賞金稼ぎではないと言いつつ、どういった経緯で海賊狩りを始めたのかを教えるとルフィはふぅと溜息混じりに迷子かと呟けば間髪入れずにゾロは怒鳴る。
それを離れた位置でジト目で見つめる二対の瞳。一つは大きな澄んだ大赦色の瞳を細めている少年サトシと愛らしい容姿と円らな栗梅色の瞳を細めているピカチュウ。
「はぁ、どっちもどっちだと思うんだけどなぁ」
「ピィカ」
「まったく…!航海もできねェなんて海賊が聞いて呆れるぜ!これじゃ“偉大なる航海(グランドライン)”も目指し様がねェ。早ェとこ“航海士”を仲間に入れるべきだな」
「あと“コック”とさ“音楽家”とさァ…」
「んなモン後でいいんだよ!!」
これから先、航海士のいない船旅にゾロは幸先不安だと感じ、一刻も早く航海士を仲間に入れた方がいいと思い進言するがルフィはコックと音楽家もいればこれからの船旅が楽しくなると提案する。
そのルフィの言葉にゾロは青筋を浮かべて怒鳴った。そして、ルフィとゾロのお腹からぐぅうと腹の虫が鳴り甲板に寝転がる。
「「腹へった」」
「お、鳥だ」
「でけェな。わりと…」
船の上空を旋回する鳥をじぃっと見つめ、ルフィは我慢ができなくなったのかガバリと起き上がり目を輝かせて言う。
「食おう!!あの鳥っ」
「?どうやって…」
「俺が捕まえてくる!まかせろ!!ゴムゴムの……ロケット!!」
そう言うとルフィは腕を伸ばし帆の所に捕まり、ロケットという言葉と同時に手を放し、上空へと勢い良く飛んでいく。
「なるほどね…」
ゴム人間ならではの方法で上空へ飛び上がったルフィにゾロはなるほどと関心し呟いたが、次の瞬間には呆気に取られた声をあげた。
それは、鳥を捕まえるつもりでいたルフィが鳥によって捕まえられているのだから。諺でいえば“ミイラ取りがミイラになった”という所だ。
そして、それは当然のように――
「ギャーー!助けてーー!!」
「あほーーーっ!!」
ルフィは鳥に咥えられたまま何処へ行くのか分からないが飛び立っていく。それを慌てて手漕ぎで追い掛けるゾロ。
「一体何やってんだ!てめェはァ!!」
ゾロが大きな声で叫んでもルフィには届いているのか分からない程遠く離れていた。そんなゾロを横目にサトシとピカチュウは溜息を一つ零した。
「それでおめェは何してんだ!?」
「何が?」
「何が、じゃねェ!あいつはおめェのキャプテンなんだろう!?」
「……キャプテン?」
「……ピィカ」
ゾロの言葉にサトシの片眉がピクリと微かに跳ね上がり、ピカチュウは不機嫌さを隠しもせずゾロを睨み付けた。
「オレは海賊なんかになるつもりは毛頭ない!」
「ピカピッカ!」
「……そうか」
静かにだがはっきりと意思を告げるサトシとピカチュウにゾロは静かにサトシを見つめ小さく呟くと鳥に連れて行かれたルフィを追い掛けるべく手漕きを止めていた手を動かす。
それから暫くして――
「おーい!止まってくれェ!!」
「そこの船止まれェ!!」
船の軌道先で必死にもがき助けを求める声にゾロは船を漕ぐ手を止めず振り向き様に声を張り上げる。
「遭難者か!こんな時にっ!!船は止めねェ!!勝手に乗り込め」
「「な!!なにいっ!!?」
手漕きの手を止めるどころか更にスピードを上げるゾロに遭難者達は信じられない思いだったが、目の前に迫った船を逃したら溺れ死ぬのは目に見えて分かるためか必死に船先へ捕まる。
「うお!?」
「どわああっ!!」
「へぇ!よく乗り込めたな」
「ひき殺す気かっ!!」
「なんて乱暴な奴だ…!!」
船に乗り込み命を落とさず助かったと一安心した一味だったが、ふつふつと怒りが沸き起こりゾロに向かって怒鳴り付け何処から取り出したのか刃物をゾロやサトシ達に向ける。
「おい!船を止めろ。俺達ァ、あの海賊“道化のバギー”様の一味のモンだ」
「あァ!?」
強気で言葉を投げかける遭難者、基道化のバギー一味は目の前の相手が誰なのか考えずに脅すがゾロは先程までの雰囲気が一変し不機嫌そうに片眉を吊り上げた。またサトシは傍らの相棒に目配せし、ピカチュウはサトシの言いたいことを瞬時に理解し頬袋から電気を放電させる。
そして――
ゾロとピカチュウの攻撃(主にゾロの拳)によって一味は痣だらけの腫れ上がった顔で引き攣った笑みを浮かべ、ゾロの代わりに船を漕いでいる。
「あなたが“海賊狩りのゾロ”さんだとは露知らずっ!失礼しましたっ」
「てめェらのお蔭で仲間を見失っちまった。とにかく真っ直ぐ漕げ。あいつの事だ。陸でも見えりゃ自力で下りるだろう。――で?何で海賊が海の真ん中で溺れてたんだ?」
「それだっ!!よく聞いてくれやした!!」
「あの女っ!!」
「そう!あの女が全て悪いっ!!」
「しかも可愛いんだ!!けっこう」
三人の内一人が頬を赤らめ女が思いのほか可愛かったと感想を告げるとゾロに事情を説明するのとは別の一味が頬を赤らめている男の胸ぐらを鷲掴み殴りかかる。
20130311