夢を乗せた船旅

□第一章
1ページ/4ページ

富、名声、力。

かつてこの世の全てをを手に入れた男“海賊王”ゴールド・ロジャー。

彼の死に際に放った一言で全世界の人々を海へと駆り立てた。



『俺の財宝か?欲しけりゃくれてやるぜ……探してみろ。この世の全てをそこに置いてきた』



そして世は大海賊時代を迎える――










一航海【始めての海賊】










海賊王と呼ばれた男が海軍によって公開処刑をされてから十年程経った頃―…

小さな港村から一人の少年が小さな小船の前で見送りに来た人々に別れの挨拶や激励の言葉を贈られていた。



「本当に行っちゃうの?」

「おう!この日を待ち侘びてたんだからな!!」

「そうだな!弱虫なのに頑張ってたもんな!!」

「だからちゃんと鍛えたんじゃんか」

「お前を海賊なんかにするために育ててきた訳じゃないのに…」

「おいおい、じぃちゃん。泣くほど嬉しいのは分かるけどさ」

「誰が喜んでおるんじゃ!お前みたいな奴でもこの村から海賊が誕生するこの汚点!!」

「まあまあ、村長さん」

「いいさ。見てろよ!俺は海賊王になってやるから!!」



ニシシッと笑い村長を始めとする村人に宣言するルフィに村人は唖然とする。
その後プルプルと身体を小刻みに震えさせる村長に気付いた酒場を切り盛りしている女主人マキノに宥められている光景を視界に入れながらルフィは船に乗り込もうとして動きを止めた。



「んん?」



船に乗り込もうと船端に足をかけた所で動きを止めたルフィにマキノは首を傾げてルフィに近付く。



「!」

「どうしたんじゃ?」



ルフィに続きマキノまで動きを止めたことで不審に思った村長が二人に声をかけながら近付く。



「……誰じゃ?」

「今までいなかったはずなのに…」

「起こしてみよう!」



船体に横たわる人物を見つけた村長とマキノは首を傾げて呟き、ルフィは横たわる人物を起こさないと何時まで経っても出航が出来ないと手を伸ばした所で横たわっていた人物の腕の中から稲妻が飛び交う。



「な、何だ!?」



突然船体に横たわる人物を守るようにして襲ってきた稲妻にルフィは船体から飛び退き、驚きと戸惑いの籠もった眼差しで見つめていると横たわる人物の腕の中からもぞもぞと黄色い物体が飛び出しルフィ達の前に立ちはだかり威嚇するように鳴き声を上げた。



「ピィカ〜〜!」



黄色い生き物に守られるようにして横たわる人物が身じろぎと共に声を漏らしゆっくりと瞼が開く。



「ん…」

「お、起きたみたいだな」

「……」



目が覚めたばかりなせいか定まらない眼差しで上半身を起こす人物にルフィが声をかける。

ルフィに声をかけられた人物――藍鉄(アイテツ)色の癖毛、深緋(フカヒ)色の瞳に目鼻が整った小鼻、鴇(トキ)色よりも薄い唇、色白のように思う肌は程よく焼けて健康そうに見える少年は声がした方へと振り向き首を傾げた。



「……だれだ?」

「俺はルフィ。そういうお前は?」

「オレはサトシ。ここは……」

「俺の生まれ育った港村だ。それから今日から俺は海賊になるんだ!」

「海賊?」



ルフィの言葉にサトシは再度首を傾げ視線をルフィから海に向け、今自分が何処にいるのか理解する。



「お前は何処から来たんだ?その生き物なんなんだ!?」



嬉々とした表情でルフィとサトシの間に立つ生き物を指差し問いかけた。



「オレ達はカントーのマサラタウンから来たんだ。それからこいつはピカチュウでオレの一番の相棒さ」

「ピカ!」

「へー」



問いかけておきながらあまりサトシの出身地に深く関心がないのか今は黄色い生き物――ピカチュウを見つめたまま一つ提案を口にする。



「なあ」

「…」

「お前も一緒に行こう!海に!!そんでもって俺の仲間になれ!!」

「はあ!?」



突拍子もなく仲間になれと言うルフィにサトシは唖然とし、何を言い出すんだ?という眼差しでルフィを見つめていると、事の成り行きを見守っていた村長が割り込むようにして声を荒げルフィを叱りつける。



「こぉんの馬鹿もの!よぉ分からん者を仲間にしようなんぞ!!」

「だってじぃちゃん」



カリカリと怒る村長にルフィは真面目な顔で淡々と落ち着いた口調で話しかける。



「俺、決めたんだ」

「何をだ!?」

「誰が何を言おうとこいつは俺の仲間にする!」



力強い決意に満ちた眼差しで言い切るルフィに村長は額に手を置き、サトシはいつの間にか勝手にルフィの仲間にされたことに慌てた。



「おい!何を言ってるんだよ。オレは仲間になるだなんて…」

「うるせー!俺は決めたんだ!!」



反論するサトシを一蹴し、無理やりルフィの――海賊ルフィの仲間にさせられることになった。





その後、未だ納得していないサトシを連れてルフィは広い広い大海原を航海する。





2010/5/7
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ