船医 ソウシ
□甘いご褒美
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今朝早く、シリウス号は港に入り、買い出しで私達以外はみんな出払っていた。
「あ! そうだ! ちょっと待ってて。」
私とソウシさんが部屋で一緒にお茶を飲んでいると、ソウシさんは急に何かを思い出して立ち上がり、部屋を出て行った。
しばらくして戻ったソウシさんが、後ろ手に何か隠しながら私に尋ねる。
「○○ちゃんは、プリンを食べる時、お皿に出す派?」
「うーん、どっちかなぁ? 出してあると見た目が綺麗だから、出す派で。」
「ふふっ、シンと同じだね。じゃあ、よかった。」
「ん? よかったって、どうしてですか? 」
「はい。」
そう言ってソウシさんは、後ろに隠していたお皿を私の目の前に出す。
「わあ! プリンだ! どうしたんですか? 」
「いつも色々手伝ってもらってるから、○○ちゃんにご褒美をあげたいなと思って。○○ちゃんプリン好きだったよね? だから、ナギに教えてもらって俺が作ったの。」
「えー! ありがとうございます! フルーツやクリームまで綺麗に盛り付けられてる。」
「うふふ、そんなに喜んでくれるなんて作りがいがあったな。」
「じゃ、一緒に食べようっか。」
「はい!」
ソウシさんはニコニコしながら隣に座ると当然のように、スプーンでプリンをすくって私の口元に持ってくる。
「はい。あーんして。」
「ソウシさんっ! 」
「どうしたの? 」
「どうしたの、って…。私、自分で食べられますっ。」
「俺がこうしたいの。」
「で…、でも…。恥かしいです…。」
「今は誰もいないよ? 」
「だめ? 」
そう言って、俯いた私の顔を悲しそう瞳で覗きこんでくる。
私はこの目に弱い…。
「だめじゃないですけど…。」
「じゃ、あーん。」
そう言ってソウシさんは、さっきの悲しげな目をあっという間に笑顔に変えて、スプーンを私の口元に近づけてきた。
私は観念して口を開け、ソウシさんのスプーンを受け入れた。