鬼物語
□伍章:似ているあの子
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「あの沖田さん…」
「『なに?』」
『沖田』という名字に俺と総司は反応する。
「あ…髪を結っている方の沖田さんです…」
「…………今まで思ったけど姓が同じだと本当にややこしいよね」
俺も総司の意見に賛成する。
理由は簡単、この新選組の屯所には俺を含め『沖田』が三人も居るのだから。
『だね。千鶴ちゃん、だっけ?』
「はい、あの…」
『ん?あぁ、そうだったね。まだ名乗ってなかったんだっけ?俺は沖田総牙。とりあえず今は一番隊組長補佐で一応総司の弟役をしてるってところだな』
「沖田さんの弟さん役?」
千鶴ちゃんは自然と首を傾げる。
「酷いな総牙。総牙は僕の弟でしょ」
『いや、弟じゃねぇし。確かに血は繋がってるけど、どう見たって明らかに違うし。と言うよりこんなに苦労かけまくる兄なんて俺はお断りだし』
「…………チッ」
総司の舌打ちはあえて聞かないフリをした。
兄弟姉妹は千晶だけで十分だい。
「え?お二人は血は繋がってるのに兄弟ではないのですか?ご親戚か何かなのですか?」
『んー…まぁ、それに近いかな』
「それに…近い?」
千鶴ちゃんはさらに首を傾げる。
『えっと、それは…』
「総牙、いる?」
またまた、ややこしくなる元凶がやってきた。
声と共に部屋に入ってきたのは千晶だった。
『千晶…少しくらいは空気読みなよ』
「あのさ、それはあまりにも酷い…ってあれ?この子は?」
千晶が千鶴ちゃんの存在に気付いた。
が、千晶が千鶴ちゃんを見たときは既に千鶴ちゃんは千晶を見ながら口をパクパクしていた。
『千鶴ちゃん?おーい、千鶴ちゃーん?』
とりあえず、千鶴ちゃんに手を振ってみる。
ようやく我に返った千鶴ちゃんだが、
「わ、私が二人居るー!」
判ってはいたけど、やっぱりそうなるか…。
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