鬼物語

□伍章:似ているあの子
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【総牙said】


総司を追いかけ回していた十数分。俺は総司を追いかけていたが、ここぞとばかりだけ逃げ足が早い彼奴を逃してしまった。


『はぁ…はぁ…総司の奴…何処に…行ったんだ…』


小さく愚痴を溢しながらも総司が居そうな所を探して廊下を歩いていると不意に横の部屋の障子が開き、部屋から小柄な影が現れた。

『うわっ!』
「きゃっ!」

小柄な影に気付くのが遅れた俺はその影とぶつかる。
俺が転ぶことはなかったが逆に俺にぶつかった影の正体は尻餅をついて転んでしまった。

「いたた…」
『あ、ごめん。大丈夫だった…ってあれ?千晶?』


千晶と瓜二つな目の前の子に俺は自然と小首を傾げる。
確かなら千晶は朝稽古をするって昨日言ってたから一君と一緒にいるはずだ。
あれ、千晶と同じ顔の隊士って居たっけ?いやそんな訳ない。


「沖田、さん…?」
『沖田さん?……あぁ…』

なるほど。
この子の発言を聴いた俺はこの子は元々ここ新選組には居なかったことが分かった。
俺を総司と間違えるのは大半は新しく入隊した平隊士か外の人間くらいだ。


『君、誰かと間違えてない?』
「えっ?」


例え女の子みたいな子相手でも何度というよりもううんざりするくらいこういった場面に遭遇していれば、自然と出てくる言葉に毒が混ざる。



「そっそれじゃ、貴方は一体…」
「総牙に千鶴ちゃん。そこで何してるの?」
『あ、総司』
「お、沖田さんが二人!?」


総司が来たことによって千鶴という子はもっと混乱し始めた。


「千鶴ちゃん、とりあえず落ち着こうか?」
「あ、はいっ」



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