鬼物語
□肆章:試合
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【総牙said】
「そこまで!」
土方歳三の声が道場に響き渡る。
男女の差はあれど嘗て自分達の師範代であった厳しい祖父から認めてもらえるほどの実力を持っていた千晶が負けたのだ。
『千晶が負けるなんてな…』
「あの子、そんなに強いの?」
『少なからずとも俺たちの時代では、ですけど』
そんな事を話していると千晶が戻ってきた。
『お疲れ千晶』
「負けちゃった…」
『まぁ、男女の力の差もあるからな。けど頑張った方だと思うよ』
励ましたつもりだったのだが、千晶はしょぼんとさっき以上にうなだれた。これは相当きていると俺は思ってしまう。
「だが、あんたの太刀筋には曇りはない」
「斎藤さん」
「精進すれば今以上に強くなる見込みはある。少なくとも、俺はそう思うな」
遠回しだが千晶の腕前を誉めているのだろう。
「あ、ありがとうございます!」
千晶はペコリとその場で頭を下げた。
「次、総司と総牙」
「やっときた。お手柔らかにね総牙くん」
満面の笑顔で俺を見てくる沖田総司に、
『油断してると怪我しますよ総司さん』
満面の笑顔で返す。
バチバチバチ…―
その時、俺と沖田総司の間に火花が飛び散ったのは言うまでもない。
「おい、てめえら。さっさと準備しやがれ」
『「はーい」』
土方歳三の言葉に俺たちはハモった。
*―*―*
『よろしくお願いします』
「挨拶はいいからさ、早く始めようか」
すると沖田総司は何故か刀を抜いた。
「別に真剣でいいよね?こっちのほうが現実味あるし」
『え?まぁ、いいですよ』
そう言うと俺は加州清光を鞘から抜き、構えた。
すると、いつの間にか回りに集まっていた外野がざわめき始める。
それもそうだ。
鏡のような同じ顔、同じ刀、同じ構えなのだから…―。
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