鬼物語
□零章:狂い咲く千年桜
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「それにしても、今年も綺麗に咲いたね」
千晶が見上げた桜は樹齢千年を越えていると言われる桜――。
その咲き方は――。
『確かに綺麗に咲いてるね』
俺たち兄妹をここへと引き寄せるかの様に狂い咲いていた。
―時は来た―
『?』
何か声が聞こえたような気がした。
空耳かと思って一応千晶に聞いてみれば千晶も聞こえたらしい。
『さっきの……なんだったわけ?』
「さあ…」
『気のせい……』
―…として目覚める時が来た―
『じゃ、ないな』
気のせいなんかじゃなかった。確かにはっきりと聞こえてくる。
―我等が王、 様…我等が姫、 様―
『な、なんだよ…』
「一体、何が…」
―我等の元へ―
一体全体何が起こったのか分からない。
身体の重力感がなくなったかの様に身体が軽く感じたと思えば頭が割れるような激しい頭痛が襲ってきた。
あまりの痛みに俺はそこで意識を手放した。
零章・終