鬼物語

□拾肆章:禁門の変・後編
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<千晶said>


皆がそれぞれの持ち場に駆け出して行って、残された私たち三番組。

痛々しい戦場の深い深い爪痕を一瞥して斎藤さんは呟いた。


「…まずは、新選組として会津の責任者に挨拶すべきか」


それを耳にした山崎さんは、「自分が動く」と自ら申し出て上層部の人々の許へ行くべく身を翻した。

それを私と斎藤さんとで見送ると、見回りを始めた。


『斎藤さん、あれ』
「揉めているようだな」


藩兵が二つに分かれて言い争っている現場に遭遇した。


「退け、御門は我等会津藩がお守りする!」
「何を申す!御門は我々薩摩藩が護ったのだ!!」
「何っ!?」


どうやら、手柄の取り合いのようだった。

その様子を見て、斎藤さんは、はぁ…、と小さくため息をついた。


「会津と薩摩が手柄の取り合いか。…愚かなことだ」


そう小さく言い捨てると、さっさと歩いていってしまう。

薩摩の人達を通り過ぎようとしたときだった。


「なにかと思えば、新選組ではないか。こんなものまで召集していたとは、やはり会津は腑抜けばかりだな!浪士の手を借りねば、戦うことも出来んのか?」


挑発的な物言いに流石の私も腹が立って、つい薩摩の人を睨んでしまう。

でも、そんな中、斎藤さんだけは平然と歩いていた。


「世迷言に耳を貸すな。ただ己の務めを果たせ。状況確認の任務に徹しろ」
『…はい』


斎藤さんの揺るがない一言に、自分の冷静さの無さを感じさせられて、思わず黙ってしまう。

私達隊士は大人しく頷いたものの、愚弄された会津の人達は黙ってる訳も無かった。


「おのれ!!我等会津藩を愚弄するつもりかっ!?」


会津藩士の一人が抜刀して、薩摩藩士に向かうって睨みを利かせた。


当然薩摩の藩士も抜刀して応戦しようと刀に手を掛けると、他の薩摩藩兵とはなんだか雰囲気が違う一人の大柄の男が、薩摩の列から割って現れた。




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