3番地

□復讐を誓う
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「グロールタイガーの船だ!」

スキンブルの切羽詰まった声が船に響き渡る。
海賊船が近づくのを見ながら、
スキンブルは船長に知らせるために
見張り台から降りる。
運び屋であるこの船には
今現在、船長以外は15人。
相手は3人。

「あの悪魔が…
絶対に仕留めてやる」

その知らせを聞いた船の船長である雉猫が、
得物の刀を構える。

「船長、大砲の準備が出来たそうです」
「そうか。マンク!」
「はい」

近くで刀を研いでいたマンカスは刀を腰に差して、
船長の近くに寄る。

「俺はこの戦いで死ぬかもしれない。
俺はそう感じる。
後は任せるぞ」
「そんな!不吉な事を言わないで下さい」
「来たぞ!」

この言葉により2人の会話は途切れ、
マンカスはスキンブルの近くに行く。

「マンカス」
「スキンブル、この戦い、どう見る?」
「かなり…不利だよね。
相手は百戦錬磨で、殺人を楽しむような奴が2人もいる」
「絶対に皆を生かす。
例え俺が死んでもね」
「不穏な事言わないでよ。
なんか、今回は凄い怖いんだからさ」

といっている間に
船がぐらりと傾げる。

「うわっ」
「やば、あの片目は
腹心の奴じゃない?
あっ、1人海に落とされた…
…って、ちょっとマンカス!
駄目だよ!!1人でなんて!!」

冷静に分析していたスキンブルを置いて、
マンカスは駆け出す。

「大丈夫さ。行ってくる」
「マンカス!」

スキンブルの制止も聞かず、
マンカスは片目である黒猫に立ち向かうために
船頭から出て行く。

「ぐぁあーっ!!」
「!貴様、仲間をっ!!」

黒猫が仲間の1人を切り捨てた瞬間、
マンカスの新緑色の瞳が
一瞬にして金色になる。

「許さない!!」
「弱者、貴様は船の船長か」
「いいや、違う。
只の乗組員、マンカストラップだ」
「ほぉ、それにしては貴様は殺りがいがありそうだな」

黒猫が右腕をふるい、
マンカスにナイフが襲いかかっていく。

「はっ!」
「腕は良いようだな」
「仲間を殺したお前を俺は許さない!!」

マンカスはナイフを弾き、
黒猫に襲い掛かる。

「ふんっ」
「はぁっ!」
「くっ」
「見切った!!」

マンカスの刀が素早く黒猫を捕らえる。
仲間が負わせた傷により
動きが鈍くなっている敵に致命傷を負わせるのはマンカスにとって簡単だ。

「な…んだ、と…」
「自分の力を過信するな。
お前だって、片目の反対側は見えないだろう。
しかも、俺の仲間に多少傷つけられている。
怪我持ちのお前に俺を倒すことは無理だろう」
「くそがぁぁああっ!!」
「しまっ…」

黒猫は叫ぶと同時に渾身の力でマンカスを踏みつけ、
黒猫のナイフが
身動き出来ないマンカスの喉を切り裂く為に落ちてくる。

ガチャンッ。

「…?」
「マンカス、君を殺させる訳にはいかないよ」
「スキンブル!」
「くそ…弱者が…っ」

スキンブルが投げた銀食器は見事黒猫の命を奪い、
ナイフを弾き飛ばした。

「他の皆は!?」
「分からない。とりあえずやられたのは5人だね」
「くそっ…」
「うぁああっ!」
「ぐぅうっ!!」

遠くで、味方と敵の断末魔が同時に響いた。
その様子を見たスキンブルの表情が固まる。

「…船長以外、僕ら以外が全滅した…グロールタイガーの手によって」
「な…んだ、と…」

呆然としてるマンカスの隣で
スキンブルも呆然と呟く。

「敵と味方諸共あいつは刺し殺してた。
全ては駒のうちって…」
「グロールタイガー…絶対に許せない」
「マンカス!船長が!!」
「!!行こう!」

自分の船の舳先でやり合っている船長とグロールタイガーを見つけ、
2人は駆けつける。

「船長!」
「お前らは来るな。これは俺の問題だ」
「しかし!」
「…いいか、別れの言葉は」
「まだある。待ってくれるか、グロールタイガー」
「あぁ」
「マンク、スキンブル。
お前らは闇に落ちるな」
「…?」
「終わったぞ。タイガー」
「では再開するか」

切って、切って、切り返す。
それの応酬ばかりで、
周りは血だらけになる。
マンカスの金色の瞳は新緑に戻っていたが、
何度もとびだそうとして
スキンブルに止められていた。

それでも、終わりはやがてやってくる。
船長がふらついたところを
タイガーは見逃さなかった。

「ぐはぁっ!」
「あっ!!」
「船長!」

2人の悲痛な叫びが海に吸い込まれていく。
船長だった雉猫は、微かに笑いながら海に落ちていく。

「…せん、ちょ…う」
「そんな…」
「後はお前ら2人か」
「……あぁ」
「…お前はマンカストラップだったな。
そっちは、スキンブルシャンクスだろう」
「何で知ってんのさ」
「お前らの働きは知ってる。
今までこの海を陣取っていた海賊船を2人で降伏させたことを知らぬ奴はいないだろう」
「…あれはスキンブルの話術が巧みだったからだろう」
「マンカスがねじ伏せたんじゃんか」
「だから、お前らを手に入れるために船を襲った」
「仲間を殺されて味方になるような輩じゃないよ、
僕ら2人はっ!」
「スキンブル!!」

スキンブルが素早く、タイガーに剣で襲い掛かる。

「…浅い」
「ぐっ!」
「スキンブル!!」

身体の脇部分を切られたスキンブルを庇うために飛び出したマンカスの右足に、
タイガーの剣が刺さる。
そして、ぐちゃりと音が鳴り、
マンカスの足から血が噴き出ていく。

「マンカス!何で庇ったの!?」
「お前にだけは死んで欲しくない。
スキンブルだけが生き残った仲間なんだから」

そんな会話が交わされている間に、
タイガーは2人の前に立つ。

「さぁ、選択しろ。
死ぬか、俺の部下になるか。
どちらだ」
「…死「部下になります」

マンカスの言葉がスキンブルの言葉にかき消され、
マンカスは驚いた表情を浮かべて、スキンブルを見る。

「命にはかえられない。
マンカスもそうだよね」
「…う…わかった」

スキンブルの表情を見て、軽く硬直するマンカスだったが、
しぶしぶと頷く。

「船に乗れ。こっちの船はもうすぐ難破する」
「…はい」
「わかりました、船長」

タイガーが船の物色をしている最中に、マンカスはスキンブルを問いただす。

「なぜ助けて貰ったんだ?」
「仲間の恨みは僕達が預かっているんだ。
機会を見て復讐をしよう」
「……」
「マンカス、君には死んで欲しくないんだよ。
最後の仲間として」
「…わかった」
「待とう、機会を」

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