紅い桜は鬼の如く……
□拾捌
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『何かご用でも?』
立ち上がり、私のほうへ歩いてくる山南さんに首を傾げる。
陽光が山南さんを照らし出すのを見て、慌てて山南さんを影へ押し戻す。
『光を浴びてはいけませんよ』
山南「大丈夫です。けだるくなるだけですから」
『でも、伊東さんや隊士たちに見つかる恐れがありますから』
私の言葉に少し残念そうに目を伏せる。
「私を心配してくれたのではなかったのですか」と軽く笑う山南さんに、顔を赤くした。
山南「貴方はとても不思議な方です。私のことを恐れない」
『……それは、山南さんが私を恐れなかったからですよ』
はて、という顔をする山南さんに、私は軽く笑った。
『私はみなさんに優しくしてもらってます。勿論、山南さんにもです。優しくしてもらった人には、優しく仕返す。当たり前のことなんです』
そう笑えば、山南さんは少し怖い顔をして「じゃあ、私が貴方を殺そうと思っていると言ったら?」と尋ねる。
私は部屋に歩き出しながら高らかに言った。
『優しくします!!』
山南さんは私の後につきながらも、「そうですね」と軽く笑っていた。
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