紅い桜は鬼の如く……
□漆
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千鶴「ところで、何か用事でも?」
近「そうだったな。おい、トシ」
土「なんで俺が……」
近「隊の事などは全部任せているからな。付添人もお前だろう?」
土「……はぁ…ったく」
土方さんは大きい溜め息を一つすると、改めて私と千鶴ちゃんの顔を交互に見つめて言った。
土「お前らに外出許可を出す」
そうと一言だけ。
『って、外出ですか?』
土方「あぁ、門の外の外出許可をお前たちにくれてやると言っているんだ」
『………』
千鶴「あ、ありがとうございます………」
近「どうしたのだ、魅也君も雪村君も。嬉しくないのか?」
千鶴「いえ!そのような事はありません。ただ……」
近「ただ?」
『………多分実感が湧かないんです』
近「実感が?」
近藤さんは何故という顔をしているが、私たちにとっては、ずっと敷地内にいるというのが当たり前になっていたのだ。
千鶴ちゃんも外に行っても、何をしていいのか、きっとわかってないだろう。
お父さんを探しに来たのに。
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