紅い桜は鬼の如く……
□弐拾
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〜慶応三年 十月〜
『千鶴ちゃん』
千鶴「魅也さん!」
テコテコと近寄ってくる千鶴ちゃん。
あれからもう半年経ってしまった。
なのに、私の体調はあまり優れず、外を出歩くには無理があった。
しかし、最近は気分がいい。
一昨日あたりから散歩が出来るようなっていた。
そして今千鶴ちゃんにあったわけだ。
私を怖がったことを何回も謝ってくれた千鶴ちゃんに、思わず苦笑いを零す。
千鶴ちゃんと一緒に屯所の門前で落ち葉を掃いていた。
すると、原田さんがこちらを向いて手を振っているのが見えた。
原「魅也、起きれたのか」
『はい。すっかり元気になりました』
鬼の姿を見たのに、やはり普段どおりだった。
原「千鶴ら、ここにはもう慣れたか?」
千鶴「はい、なんとか。立派な屯所ですよね」
『………』
広大な敷地に立てられた建物。
そういえば山南さんといろいろあったな、と思い出す。
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