紅い桜は鬼の如く……

□拾陸
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〜元治元年 十月〜






冬の訪れも間近になってきた。



あの変な桜の下で拾われてからもうすぐで一年経つと思うと、時の流れは早いと思う。


あっちの世界は平和だったからか、時の流れが遅かった。
こっちの世界では早過ぎるものだ。



これほど月日が経っているというのに、元の世界に帰りたいなどと一度も思ったことがない自分に自嘲する。






藤堂さんは八月に江戸にいる“伊東大蔵”という人に会いに行っていた。



とても聡明で、剣客だとか。参謀として向かい入れると近藤さんが話していたのが、今でもはっきりと思い出せる。



藤堂さんは伊東さんの迎えついでに千鶴ちゃんの実家に寄っていくと言っていた。



もうすぐで帰ってくるということで洗濯物を何回も落としている千鶴ちゃんを見て、私は笑っていた。



伊東さんは下の名を“大蔵”から“甲子太郎”と改めていた。








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