紅い桜は鬼の如く……

□弐拾
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原「西本願寺の坊主どもが建てた屋敷だからな。ま、体のいい厄介払いだ。俺たちがいると何か騒々しいし」


千鶴「鬼の襲来もありましたものね……」


『………』



控えめに言ったあと、私の様子を窺う。


ん?と首を傾げると、千鶴ちゃんはパアッと明るい笑顔を見せてくれた。



手狭になった八木邸から西本願寺への移転には、死んだことになっている山南さんを隠し、長州封じのためという理由があった。


移ってからすぐ風間さんたちに襲撃されたから、私に何かしらの心の傷があると思ったんだろう。


気を遣ってくれたことが嬉しかった。




『西本願寺はなんとかして新選組を追い出したんでしょうかね』


千鶴「今回のことがいい口実になったでしょうし……」


原「おかげでこの屋敷が手に入ったんだ。鬼の連中にも礼を言わなきゃならねえかもな」



暗い顔をしていた千鶴ちゃんに気を遣ってか、おどけて見せる。


当の本人である私はまったく気にしていないのだが。


今の新選組の屯所は六月に不動堂村に移した。


ヨロヨロと無理矢理ついていったのを覚えている。
結局原田さんにおんぶして運んでもらった。



『自分からお金出したんですってね』


原「ああ。余程追い出したかったんだな」



建設費用は勿論のこと、移転にかかる費用もすべて西本願寺が負担したと聞いている。





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